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２１年前の震災思い歌に 全盲シンガー「私、生きてる」
2016年1月15日15時37分
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神戸市灘区の蔀（しとみ）より子さん（６６）は２８歳で視力を失い、「見えない世界」を
生きてきた。５０歳でギターを手にして歌い始め、６０歳でライブ活動をスタートさせた。
きっかけは、２１年前の大震災。「私だから伝えられることがある」。そう気づいたことだった。
《こもってたんじゃ始まらないよ 出かけてみませんか 一人じゃない 勇気を出して
はじめの一歩》
先月２０日、同市長田区の喫茶店。１５人の聴衆を前に、自ら作詞作曲した
「出かけてみませんか」をギター伴奏で歌った。大阪府池田市の市山としこさん（６５）は
「前に進んでいかなあかんって曲も、悔しい思いもしてはるんやろって曲もある。
心に響きます」。
高校の教員だった２５歳のころ、体調が悪化し、病院から出された薬を飲み始めた。
３年後、目が見えなくなった。別の病院の医師に「副作用だ」と言われた。
受け入れられず、１０年ほど家に閉じこもった。母の後押しで福祉施設に入り、
訓練で針穴に糸を通すことができるようになったとき、「見えへん世界で生きていける
かも」と思えた。
両親が亡くなり、近くの高校に通うおいと２人で暮らしていた１９９５年１月１７日。
２階で寝ていると大きな揺れに襲われた。同時に近所の人の悲鳴と食器が割れる
音が聞こえた。
頭の近くに何かある。倒れたテレビだった。１階に下りると本が散乱し、玄関は
開かない。居間でじっとしているしかなかった。翌朝、大阪の親戚が来てくれた。
おいも無事だった。
３カ月ほど親戚宅に身を寄せ、自宅に戻った。道路の点字ブロックがはがれ、
１人で街を歩けなくなっていた。避難所で知的障害のある子が「うるさい」と言われた
と知人から聞いた。
「みんな必死。こんなことに困るって障害者が自分から言わんかったら、
誰も手を貸されへん」。自ら進んで発信することが大切なんだ、と気づいた。