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『得点力アップのためのヒント』と題した論文を発表した、東京経済大学サッカー部の監督を務める富岡義志雄教授の見解から決定力不足を解消するにはどうすれば良いのか、そのヒントを探ります。(『ジュニアサッカーを応援しよう!Vol.38』より一部転載)
■ ジュニア世代から得意なものを指導者が一緒に探してあげる!
2011年2月に東京経済大学のサッカー部の監督を務める富岡義志雄教授が『得点力アップのためのヒント』という論文を発表した。「なぜ、この論文を作成したのか」を問うと、次のように答えてくれた。
「シュートチャンスがあるのに、日本人選手は打ちません。ボールを蹴ってもふかしてしまうことが多い。そこには理由があり、何を改善すればいいのかとさまざまな書物に目を通しました。
今後、ゴールを決めるためのスキルアップのヒントになればいいなと、研究ノートとしてまとめました」
さらに興味深い見解も語ってくれた。
「プレーはすべて100%でやればいいわけではありません。人間が力を最も発揮できるのは70~80%の力でプレーしたとき。そのときに力を出し切る確実性が増すのです。つまり、シュートも100%で蹴ろうとすると失敗する可能性が発生します」
よく肩の力を抜いてプレーすると、うまくいくと耳にする。何事もそうかもしれないが、気合が入りすぎても、逆に緊張しすぎても普段通りのプレーができない。教授はこうアドバイスをしてくれた。
「シュートで言えば、得意なコースやシュートパターンを作っておくことも大事です。その理由は自信と余裕にあります。
たとえば、最近引退したデル・ピエロ選手が得意とした左斜め45度エリア、通称デルピエロゾーンもそうです。このエリアでシュートを打ったら絶対に入るという自信が余裕を生み、ゴールにつながる。
すると経験が上積みされるから、より自信が深まります」
ゴールを決める感覚を養うには、ジュニア世代から得意なコースやシュートパターンを身につけるのも1つの手段である。それがあればチームもそれにハマるようにプレーでき、攻撃の指針になる。
すると、必然的に得点力アップにも関係してくる。
■ 海外の選手のシュートは『腰で蹴る』
シュートに限らず、プレーの上達には子ども自身が気づき、自ら練習にこだわりをもって取り組むことが必要不可欠である。
だから、指導者は選手に寄り添い、自信を持っているシュートやそのパターンを一緒になって見つけるのが役目だ。それが得点力を上げるのに有効な近道の1つだろう。
富岡教授もサッカー部の監督だが、指導者として選手に与えられるものは理論やデータなどの知識に基づいたヒントだという。
「とある本に、こんなことが書かれていました。ストイコビッチが名古屋グランパスエイトで日本人選手に対し『なぜパスをするたびに毎回止まってしまうのか。
それでは相手にパスが読まれてしまうだけでなく、次の動き出しも遅れ、試合の流れが止まってしまう』と指摘したことがあると」
これは日本人選手のキックが海外の選手と異なることを意味する。日本人はキックの際、一連の動作で立ち足に重心をかけ続けているから次の動作が遅れる。重心を蹴り足と同じように前方へと移動させたら次の動作へスムーズに移行できる。
論文には、日本人選手と海外の選手のインステップシュートのフォームを比較した表が記されている。そのなかには、おもしろい違いもある。
『蹴り足の軌道』では、日本人はボールが上方に上がりやすく、海外の選手は低い弾道で飛ぶ特徴があるとか。ほかにも、『腰の動き』では、日本人選手は動かさず、海外の選手は捻るため、イメージとしては腰で蹴る感覚だとか。
このように文字に起こされるとより強く認識し、プレー中でも客観性をもてる。そして、これに関連したデータがある。
それは、2002年と2006年のワールドカップで得点となったシュートコースのデータである。ポイントは『高さ』だ。肩から上、腰から肩、腰より下で調べると、両大会とも70%以上、腰より下の低い弾道でネットをゆらしている。
元ブラジル代表のジーコが「シュートはゴールにパスをするように打つのが基本」だとアドバイスをしていたことは有名だ。それと同様、データからもわかる通り、低い弾道の方がGKも防ぎにくいようだ。
この前に、インステップシュートのフォームの違いに触れたが、『低い弾道』のシュートが蹴れる海外の選手が確率高くゴールを奪えているのはデータにも表れている。