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キューバは今、夏休みの真っただ中だ。ハバナの運動公園ではランニングシャツに半ズボンの
子どもたちが午後8時を回ってもサッカーボールを追いかけている。公園には野球場も6面あるが、
膝まで雑草が伸びて荒れ放題。隅で少年野球を指導していた男性が話しかけてきた。
「あそこ、次に打つのが息子。いま6歳だけど赤ん坊のころ、マミー(母さん)、アグア(水)の
次に覚えた言葉がゴールだったんだ。野球より先にサッカーだなんて信じられないだろう」
キューバの国技、野球が低迷している。人気はサッカーに追い越され、国際大会
ワールド・ベースボール・クラシックでは2009年、13年と連続して2次ラウンドで敗退した。
浮沈のカギを握るのは米国との外交関係だと球界関係者は語る。
キューバの代表チームが他国に勝てなくなった最大の原因は戦力の流出だ。
米大リーグの高額年俸に魅せられ主力が次々と亡命し、キューバ国籍を捨てた。
今季は18人の亡命キューバ人選手が大リーグの開幕日に出場選手登録された。
160キロ左腕のチャプマン、昨季新人王の内野手アブレイユ、オールスター戦の
本塁打競争を2年連続で制した外野手セスペデス。いずれもかつてキューバ代表の花形選手だった。
国営テレビは大リーグを中継することもあるが、亡命キューバ人選手が所属する
チームの試合はめったに放映しない。ヒーロー不在となった国内野球リーグは人気が落ち、
代わって欧州のサッカーがテレビの看板番組になった。ラジオで国内リーグの実況を
20年近く務めているアンディ・バルガスさん(59)は「野球場に観戦に来る子どもが随分減った。
テレビがサッカーばかり流すから」と嘆く。
米国による経済制裁で野球道具や原材料の輸入が滞っている影響も大きい。
日本や米国製の道具がスポーツ用品店に並ぶことはなく、品質が劣る中国製のグラブなどを
密売人から買うしかない。公務員の平均月給が20ドル(約2500円)なのに、
軟式ボール1個が10ドル、グラブが40ドルもする。ボール一つで遊べるサッカーに比べて
「野球はカネのかかるスポーツになってしまった」。そう語るのは00年シドニー五輪銀メダリストで
国内リーグ、ハバナ・インダストリアレスのメンデス監督(51)。「国交回復後、キューバ人選手が
国籍を保持したまま大リーグと契約できるようになれば良いのだが」
国交回復によって亡命に歯止めがかかり、経済制裁解除によって野球が再び庶民の娯楽に戻れば、
キューバ野球が復興するとの期待感は高まる。しかし今月開催された米州各国が参加する
パンアメリカン大会でも、出場したキューバ代表から2人が米国で亡命した。
今が旬の現役選手は政治の動きを悠長に待ってはいられないようだ。
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