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数字の大小にテレビ局が一喜一憂する視聴率。本格的な調査が始まった1960年代以降、企業がCMを出す際の「広告指標」として、
そして番組の人気を社会が共有する「文化指標」としての役割も果たしてきた。しかし近年、テレビの見方が多様化するなかで、曲がり角を迎えている。
3月まで続いた冬季の連続ドラマの最終回。放送中に見た割合を示す世帯視聴率(ビデオリサーチ調べ、関東地区)で比べると、
NHKの「マッサン」が23・2%で圧勝。多くの民放ドラマは1桁台に沈んだ。
だが同じビデオ社の調査でも、一般には非公表の1週間以内の録画再生率(タイムシフト視聴率)を見ると、
「マッサン」は6・1%。視聴率11・3%だった「ウロボロス」が録画では9・1%と、「マッサン」を上回る。
「録画してまで見た番組」とモノサシを変えれば、人気の別の側面が浮かび上がってくる。
日本テレビが首位を独走、フジテレビは大苦戦―。世帯視聴率で見た最近の民放各局の状況だ。
だが調査会社データニュースの局別録画数ランキングでは、昨年1位はフジ、日テレは2位。
同社の大石庸平研究員は「フジは録画されやすいドラマを多く放送しているため、上位に入りやすい」と分析する。
世帯視聴率は、家庭のテレビで、放送中に見ることを前提に生まれた指標だ。
戦後、街頭テレビでプロレス中継を見ていた人々は、59年の皇太子ご成婚パレードや64年の東京五輪を機にテレビを買う。
62年、テレビ局や広告会社などがビデオ社を設立。63年のNHK紅白歌合戦は視聴率81・4%、83年11月12日の「おしん」は62・9%を記録した。
高視聴率をメディアが報じ、世間の話題になってさらに視聴率が上がる―そんな好循環の中で、「みんなが見た番組」は国民の関心事となった。
ところがデジタル化の進展で、テレビ番組はいつでもどこでも見られるものになった。2000年代以降、大容量の録画機器や、
携帯電話などで見られるワンセグが普及し、番組のネット配信も拡大。録りためたドラマを週末にまとめ見するスタイルも一般化した。
ビデオ社によると、午前6時~深夜24時の総世帯視聴率(関東地区)は、03年の44・4%から13年の41・7%に落ちている。
たとえば視聴者が「絶対見逃せない」と思う番組を録画し、ブルーレイディスクに大事に保存したとしても、その行為が世帯視聴率に反映されることはない。
リサーチ評論家の藤平芳紀さんは「視聴率調査は半世紀以上大きく変わっておらず、番組の人気を測る尺度とは言えなくなってきている」と指摘する。
90年代には視聴率20%超えが当たり前だった連続ドラマも、最近は1桁台に低迷することが珍しくない。
一方で、「家政婦のミタ」や「半沢直樹」のように、ソーシャルメディアで人気が拡散し、ヒットにつながるケースも生まれている。
NHKは、録画再生やネットも含め、視聴者の番組への接触の全貌(ぜんぼう)を把握するための評価手法「トータルリーチ」の開発を掲げている。
他方、民放各局の中では、従来の視聴率を支持する声が根強い。
「視聴率は『共通の通貨』として機能している」(日テレ・小杉善信専務)。「本当に見たい番組は、家に帰って生で見る」(フジ・大多亮常務)。
「リアルタイムで見てもらうのが第一目標」(TBS・伊佐野英樹編成局長)。
もし録画再生率を視聴率に加算できれば、テレビ局はCM料金の値上げを狙える。しかし、そのためには「CMがどれだけスキップされずに見られたか」というデータの開示が不可欠だ。
民放関係者は「スポンサーは『ではリアルタイムのCMは実際どれだけ見られているのか』と言い出し、
値上げを渋るだろう。ヤブ蛇になるのが怖いから、各局とも録画再生率に慎重にならざるを得ない」と明かす。
コラムニストの小田嶋隆さんは言う。「テレビの観客席として存在してきた『お茶の間』が消え、いまは混沌(こんとん)とした状態。
広告業界が必要とする以上、マーケティング指標としての視聴率がなくなることはない。しかし、人々が横並び意識を脱して流行への追随をやめるなか、文化指標としての価値は失われつつあるのではないか」
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