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FIFAワールドカップブラジル大会が閉幕し、ツール・ド・フランスが終盤にさしかかっています。
絶対的な力を見せつけている28歳のイタリア人選手、ヴィンチェンツォ・ニバリ(アスタナ プロチーム)効果で、
イタリアでツール・ド・フランスの平均視聴率は連日30%を超えています(Auditel調べ)。まさにニバリフィーバーが
起こっています。
しかし自転車レース観戦が盛り上がっている裏で、イタリアスポーツ界で大きな騒ぎが起きています。
100年以上の歴史を誇る2つのサッカーチーム、2013-14シーズンは2部にあたるセリエBに所属していた
ACシエナとACパドヴァが消えることになりました。両チームとも経営陣が来シーズンのリーグ登録に必要な資金を
集めることができず、チームが消滅するという残念な結果になりました。サッカーはイタリアの「国技」と
呼ばれているだけあって、多くのサッカーファンにとってショッキングなニュースでした。
なぜこのような事態が起きているのでしょうか。主な原因は3つだと考えられています。それは「経済危機の影響」
「サッカーのファン層の変化」「スポンサーの意識の変化」です。
■経済危機がもたらした悲劇.
2008年にリーマンブラザーズの倒産から始まった世界的な経済不況の影響は、ヨーロッパのスポーツ界にも
大きな打撃を与え続けています。業績悪化に苦しむスポンサーたちが、スポーツのチームや大会、また文化イベントへ
投じる予算を大幅にカット。スポンサーの援助なしで生きられない多くのチームは活動停止や廃部をすることになりました。
■サッカーはもはや国民的スポーツではない?.
2000年代までは、イタリアではサッカーが不動の人気を誇っていました。しかしその理由は、多額の賞金を与える
サッカーくじ人気にあったといってもいいでしょう。2000年まで国はギャンブルを強く規制し、サッカーくじ、競馬、
ナンバーズ、宝くじなど、ごく一部の賭け事の販売しか認められていませんでした。そもそもイタリア人の大半が、
試合の内容よりサッカーくじに直接つながる結果にしか興味がなかったものです。
しかし、くじの自由化に伴って次から次へ新種のくじが現れ、知識がないと簡単に遊べないサッカーくじの人気は
急速にかげりをみせ、サッカー離れが加速し始めました。
実際、サッカーくじを買わず、他のスポーツに目を向ける若者たちが増えています。
■ジロのスポンサーで売り上げ急増.
現在、サッカーを支えていた様々なスポンサーは自転車競技へシフトしています。2012年からジロ・デ・イタリアにおいて
マリアローザのメーンスポンサーになったバロッコ社社長のアルベルト・バロッコ氏は、ガゼッタ・デッロ・スポルト紙の
インタビューに対し、次のように述べています。
「2008年にサッカー・セリエAの強豪チーム、ユヴェントスのスポンサーになりました。しかし2008年の当社の売り上げ高は
6000万ユーロにとどまり、サッカーに投資しても目に見えるような変化はありませんでした。その後、ジロ・デ・イタリアの
スポンサーシップを始めてから2年がたち、売り上げは確実に、急激に伸びています。2013年は売上高が1億5000万ユーロを超えました」
「自転車競技のスポンサーシップへのシフトは大きな転換となりました。サッカーの場合は、ファンたちが一つのチームに対する
愛着が強く、スポンサーとしては限られた効果しか得られません。しかし自転車競技のファンたちは、もっと広くスポンサーを
意識しているからだと考えています」
ジロ・デ・イタリアの表彰式で使う発泡酒を提供しているアストリア社も、5月にヴェローナ市で開催された
「Vinitaly(イタリア最大のワインフェア)」に自転車ブースを置き、全面的に自転車競技をアピールしました。さら広報担当者は
「ジロ・デ・イタリアのおかげで、肌で感じられるほどの売り上げアップにつながった」と述べています。
たしかに、自転車競技における宣伝効果の影響は大きい。私もスーパーで買い物をしていると、特定のメーカーの製品に
自然に手が伸びていて、自分で驚くことがあります。洗脳に近いものですね(笑)。
さて、ツール・ド・フランスの閉幕まであと少し。マルコ・パンターニ以来、16年ぶりのイタリア人総合優勝を願って、
スプマンテを用意しました。
「Che vinca il migliore(誰であれ、優勝した者に乾杯)」。
文 マルコ・ファヴァロ
URLリンク(cyclist.sanspo.com)