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昨年6月、アエラは佐村河内(さむらごうち)守氏(50)に対し3時間に及ぶロングインタビューをした。心を動かされた部分は確かにある。だが、
どこか腑に落ちなかった。そして、違和感の数々―。掲載は見送った。取材当時のことを振り返る。
インタビューは手話通訳者を介して行われた。それは、実に自然であった。会話にもっと苦労するだろうという先入観は、すぐに消えていた。
(中略)
こんな逸話も披露してくれた。
2001年頃のことだ。オーストリアのウィーンにあるベートーヴェンの墓に参ったという。墓前で彼はこう言った。
「ベートーヴェン先生、僕は障害も職業も、先生と一緒です」
すると、天空からベートーヴェンの声が降りてきた。
「違う。俺とお前は違う」
「何が違うんですか」
「作品のレベルと格が違う。障害と職業が一緒であろうが、俺とお前は違う。出直してこい」
ショックを受け愕然とし、けれどこれがバネとなり交響曲第1番を書き上げたという。事実は小説より奇なり、だ。もし偽りがないのなら、私たちに
はわからない高い次元での話ということになる。
取材後、多角的な記事にしようと複数の関係者に当たってみると、思わぬ展開が待っていた。
「佐村河内氏の話のどこまでが本当なのか、甚だ疑問だ」
「クラシックでは時折、過去の作品をモチーフに作曲することがあるが、彼の作品はバッハやベートーヴェン、マーラーなどの影響が色濃く、オリジ
ナリティーに疑問がある」
「お金にうるさい」
「本当は全聾ではなく、聞こえているのかもしれない」
こうした指摘を受け、本誌は記事の掲載を見送った。
(抜粋)
URLリンク(zasshi.news.yahoo.co.jp)