12/07/15 08:56:54.19 mFHSmMId0
気になる展開だ
13:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
12/07/15 08:59:33.15 G2xyMbst0
それからというもの、QBは多忙でした。
マミさんの親族はマミさんの養育にあまり熱心ではなかったので、マミさんには生活に必要なもろもろの負担がかかりました。
家事や社会的な手続きは小さいマミさんには大変な作業でした。
魔法少女といえど日常生活のしがらみを無視するのは難しいのです。
QB「これは染みになるからすぐ洗わないとね。洗濯機の使い方は覚えたかい?」
QB「給食費は忘れずに先生に渡すんだよ」
マミさんが一人でも暮らせるように、QBはたくさんの世話をしました。
料理を教えたり。
しつこいセールスマンの追い返し方を教えたり。
全てはマミさんを効率よく動かして魔女にするためです。
反対に、営業する時間はどんどん減っていきました。
14:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
12/07/15 09:04:54.27 G2xyMbst0
QB「ねえ、マミ」
マミ「どうしたの?」
QB「君のやり方は効率的じゃないよ」
数年が経ちました。
マミさんもベテランの魔法少女になり、大抵の魔女には負けません。
家事も一人でできるようになりました。
QB「緊急性の低い使い魔まで退治している。魔力の無駄だしリスクが大きい」
QBはいまだにマミさんと一緒に暮らしています。
マミさんにそそいだ時間と労力を無駄にしないためです。最後まで見届けるつもりでした。
マミ「でもQB、使い魔も放っておけば被害を出すわ」
QB「それは君にとって重要なことかい? 被害が出るとしても、
君とは縁もゆかりもない人物である可能性が圧倒的に高いさ」
QBはこれまでで学習していました。
人間には優先度があるということを。
奉仕と献身は賞賛される行為ですが、無関係な人間にまで施す決まりはどこにもありません。
15:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
12/07/15 09:11:11.54 uKWKMVZQ0
ほほう
16:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
12/07/15 09:11:11.56 G2xyMbst0
QBはあくまで理知的に説きました。
それはこの国の法律からいっても、道徳からいっても、非の打ちどころがありません。
QB「君が誰かのために頑張らなきゃいけない理由はないんだよ」
マミ「理由ね……あなたが親切にしてくれたから、じゃダメ?」
あまりに唐突でQBには理解できませんでした。
マミ「困ってる時にあなたが優しくしてくれて、とてもうれしかったわ」
そうではありません。QBにはQBの目論見があってマミさんの世話をしたのです。
マミ「だから今度はわたしが困ってる人を助けたいの」
QB「君に助けられた人は、君に助けられたなんて少しもわからない。君の場合とは全然違う」
マミ「それでも、わたしが助けた人がまた別の困ってる人を助けるかもしれない。
それがどんどん広がったら素敵でしょう」
17:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
12/07/15 09:11:51.64 EJxXDYUn0
>>1がきゅっぷいちゃんが好きなのは痛いほど分かった
18:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
12/07/15 09:16:09.00 G2xyMbst0
やっぱり人間は論理的じゃないね、とQBは思いました。
第一、マミさんに無理をされたらQBが困るのです。
それをどうやって伝えようか思案していると、またマミさんが言いました。
マミ「心配してくれてありがとう、QB」
QB「わけがわから…」
QBが言い終わる前にマミさんは行ってしまいました。
迷子らしい子供を発見したからです。
魔法少女に変身しなくてもマミさんは困っている人を放っておかないのです。
QB「わけがわからないよ」
QBはつぶやきました。
19:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
12/07/15 09:24:10.48 G2xyMbst0
まどか「QBはどう思う?」
QB「え?」
まどか「どうしたらほむらちゃんと仲良くできるかな」
しばし昔のことを考えていたQBでしたが、すぐに頭を切り替えました。
QB「彼女の行動になんらかの意図があることは間違いないけど、目的がわからないことにはね」
さやか「そうだよねー。魔法少女にはなるなって言われても、こっちは納得できないし」
マミ「なにか不都合でもあるのかしら?」
QB「それは…」
さやか「あ! もうすぐ始業時間だ」
マミ「ちょっとおしゃべりしすぎたみたいね。急がなくちゃ」
皆は早足で学校へ向かいます。
真面目なマミさんもこんな日だけは遅刻ギリギリです。
けれどマミさんはどこか嬉しそうでした。
20:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
12/07/15 09:29:44.58 G2xyMbst0
QBの仕事は相変わらず滞っています。
まどか「ごめんね、まだ決まらないの」
QB「それじゃ仕方ないね」
朝一でまどかを勧誘して断られ、
QB「暁美ほむら、そんなに気になるなら思い切って近づいたらどうだい?」
ほむら「お前にしては妙なことを言うのね」
遠巻きに眺めるほむらを少しだけ注意し、
杏子「この世に正義の味方なんていないんだ。自分の好きにやりゃいいじゃねえか」
さやか「いないからあたしたちが好きにやってんじゃない」
時折角を突き合わせる杏子とさやかをなだめ、
21:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
12/07/15 09:35:17.71 G2xyMbst0
QB「さやかは前に出すぎだ。もっと冷静にならないと」
さやか「面目ない」
杏子「へへっ、突撃バ~カ」
QB「杏子もだよ。もっとさやかと連携するんだ」
ほむら「フォローするこっちの身にもなってほしいわね」ボソッ
さやか「ん?」
ほむら「」ザワールド
まどか「今ほむらちゃんがいたような…」
マミ「きっと『敵か味方かわからないけどピンチにはなぜか助けてくれるミステリアスな戦士』を装いたいのね」
QB「マミもそういうの好きだね」
ほむら(おかしなイメージをつくられてる……)
魔女退治が終われば皆を労う。
22:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
12/07/15 09:42:08.85 G2xyMbst0
人間はわけがわからないので思い通りに動かすのは骨が折れます。
いつも気を配っていなければなりません。
だから他のQBたちのように営業ばかりできないのです。
QB「この生活はとても疲れるね」
マミ「どうしたのQB?」
QB「なんでもないよマミ」
そして楽しそうな顔のマミさんと家に帰るのです。
QBは今の生活が変わることを考えませんでした。
考えられませんでした。
23:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
12/07/15 09:49:10.59 G2xyMbst0
ある日、QBのところに別のQBがやって来ました。
あまりにも仕事をしないQBに帰還命令を伝えに来たのです。
新QB「君の思考にはノイズが混入している。母星で速やかにクリーニングを受けるんだ」
QB「ノイズだって? 僕は正常だよ」
新QB「リモート検査の結果がそうなっているんだ。現に今も命令に従おうとしないことが証拠さ」
QBはなにも言い返せなくなりました。
そもそもインキュベーター同士で見解の相違が存在することがおかしいからです。
新QB「君の担当区は僕が引き継ぐよ」
しかしQBは決して承諾しませんでした。自分がいる限り誰にも代わりは任せないと断言したのです。
新QB「しょうがない。しばらくは留任を認めよう。でももし君がインキュベーターの力を不正に使おうとしたら、
その時は自壊プログラムが作動するからね」
24:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
12/07/15 09:54:04.83 G2xyMbst0
QBは初めて「気持ち」を自覚しました。
これが人類の持つ感情と同じなのかはわかりません。
ただ、今の生活がずっと続けばいいと思っている自分に気付いたのです。
けれどQBはインキュベーターです。
やがて変化は起こりました。
さやかが魔女化したのです。
マミさんと皆はとうとう魔法少女が都合の良いシステムではないと悟りました。
ほむら「魔法少女というのは……」
ほむらが真相を話します。ソウルジェムのこと、グリーフシードのこと、魔女のこと。
マミ「嘘でしょQB?」
マミさんが震える声で尋ねました。
QB「全て事実だよ。僕たちは嘘がつけないんだ」
インキュベーターは嘘がつけないのです。
25: 忍法帖【Lv=40,xxxPT】
12/07/15 09:55:45.36 ujwYCjiB0
支援
26:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
12/07/15 09:58:33.40 G2xyMbst0
皆がそろうことはもうありませんでした。
魔女になったさやかは退治され、杏子もその時に死んでしまいました。
QB「まどか、願い事は決まったかい?」
まどか「…………まだ」
まどかは以前のように打ち解けなくなりました。
落ち込み、暗い顔をしています。
それでもQBはいつものように勧誘を続けました。
それがインキュベーターの仕事なのです。
27:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
12/07/15 10:04:56.27 G2xyMbst0
マミ「パトロールへ行ってくるわ」
真実を知ってからふさぎ気味だったマミさんも、しばらくすると普段の調子を取り戻しました。
魔女や使い魔から街を守らなければいけないからです。
しかしマミさんでも平静ではいられません。
再び一人きりになった負担もあります。
QB「マミ、必要最低限の魔女とだけ戦うんだ。ほむらだってそうしているよ。
このままじゃ遠からず君も限界がくる」
マミ「あなたはわたしたちを魔女にするのが目的なんでしょう?」
QB「……そうだよ」
インキュベーターは嘘をつけないのです。
28:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
12/07/15 10:09:49.37 G2xyMbst0
マミ「わたしに親切にしてくれたのも、全部そのため?」
QB「……そうだよ」
マミ「そう……そうなのね……」
QBは嘘をついていません。
でも本当のことを言っているわけではないと叫びたくなりました。
それがなぜかはわかりませんでしたが。
マミさんはこの話題についてはもう口にしませんでした。
QBを追い出したりはしませんでしたが、
会話はとても少なくなりました。
29:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
12/07/15 10:14:39.70 kxrz4dfOO
支援
30:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
12/07/15 10:14:52.45 G2xyMbst0
決定的な日が訪れるのに時間はかかりませんでした。
QB「マミ、ここの魔女は強力だ。今の君では危ういよ」
マミ「暁美さんにはなにか別の目的があるようだし、わたしがやるしかないわ。この街はわたしが守らなきゃ」
QB「だからそれは…」
マミ「QB」
マミ「心配してくれてありがとう」
魔女を退治することはできましたが、マミさんは魔女化が避けられないほど消耗しました。
もう、どうすることもできません。
31:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
12/07/15 10:16:02.02 3HmOsV6D0
マミさんのデカパイ揉みたい
32:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
12/07/15 10:21:18.16 G2xyMbst0
QBははじめてまどかに一日二度目の営業をしました。
規格外の素質を持つまどかなら、願いでマミさんを助けられるかもしれないからです。
QB「さあ、まどか。僕と契約して魔法少…」
QBは言いかけて止まりました。
まどかと契約してマミさんが喜ぶのか?
まどかが魔女化したら地球はどうなるのか?
それらの疑問はインキュベーターにとってどうでもよいことです。
インキュベーターならば、ここはとにかく契約を迫るのが正しいのです。
しかし、
QB「ごめんよ、まどか。なんでもないんだ」
QBははじめて仕事をさぼりました。