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でもまだある。
「いつもならこの仕込みは一遍に三十枚はやるんだけれどな、まあ今日はデモンストレーション
だからその後の作業を見せてやるよ」
輪切りにしたライムを股の所にこすりつけた。
スッと一ぬり。
大きな霧吹きに入ったヌクマムをさっと一吹き。
トンカチを手に持ち、ふり下ろしていた時の、すばらしい彼の動きからすると、そのライムと
ヌクマムの作業に入った途端、少しばかり卑屈になったように見えた。
急に背中が小さく見えた。
僕も何だか恥ずかしい物を見ているようで、目をそむけてしまった。
「はいでき上りー! いつ見てもいいできばえだね、全く」
一枚につき三分かかったかどうか、その気になればかなり量産できるに違いない。
「ほらみてみろよ、このよごれ具合。匂いといい使い古し感といいたまらないだろ、おっといけない、
早くプラスチックの容器に入れなくちゃ、鮮度が大事だからね」
これら彼の作品が日本各地のブルセラショップに並ぶわけである。
世の男はまんまとだまされていることになる。
僕の考えを知ってか知らずか彼は語りだした。
「このパンツはさ、ダイヤモンドだよ、古美術さ、もっと言えばカニカマボコさ。イミテーションと
言ってしまえばそれまでだろ。でもそれに手を出す奴は皆どこかで納得しているだろ!
だましてやろうなんて悪意で作ってないさ、俺はな……」
「しかしトンカチとライムとヌクマムじゃあちょっと気の毒な気も……せめて奥さんにはかすとか
できないかと……」