11/05/16 23:09:57.24 U6dkPqdI0● BE:2112633784-2BP(2)
sssp://img.2ch.net/ico/ppa2.gif
ブラック・スワン 心の闇にもだえる白鳥
2011/5/13付
今年のアカデミー賞作品賞の候補作。監督賞候補だったダーレン・アロノフスキーは、ミッキー・ロークを復活させた前作『レスラー』と同様、
俳優の肉体を改造させ、大役を得たバレリーナの不安から無意識のうちに自らの肉体を傷つけ、血を滲(にじ)ませる姿をホラーとアートの絶妙のバランスの上に成り立たせた。
アカデミー主演女優賞を得たナタリー・ポートマンが演じる可憐(かれん)なニナは、所属バレエ団の新シーズンを飾る『白鳥の湖』の主役に選ばれた。
ところが清純な白鳥と邪悪な黒鳥を演じなければならないのに、技術は確かでも感情表現の幼さで演出家(バンサン・カッセル)を苛立(いらだ)たせる。
娘に主役を踊らせることだけが夢の母親の過剰な期待。妖艶なライバル、リリー(ミラ・クニス)の出現がニナを追い詰め、心の奥に潜む暗い部分が目を覚ました。
この映画が素晴らしく魅力的なのは、現実と妄想のはざまにエロティシズムを介在させたところだ。
ニナとリリーのレズビアン・ラブは妄想か? リリーの誘いで遊んで寝過ごした翌朝、ニナは彼女が代役に決ったことを知った。
道ですれ違い、鏡の中に現れる邪悪な表情のもう一人の自分。いかにも潔癖そうなナタリーの凄絶な演技が痛々しい。
鏡のシーンを多用しながら人間の内なる暗部を映し出し、次第に狂気に駆られていく姿を容赦なくとらえる非情な演出。息苦しくなるような緊迫感の中に初日の幕が上がった後の恐怖は悪夢か現実か?
チャイコフスキーのバレエ組曲『白鳥の湖』に材をとった大人のエンターテイメント。不気味さが快楽につながって甘美だ。1時間48分。
URLリンク(www.nikkei.com)