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今週の本棚:山崎正和・評 『原発報道とメディア』=武田徹・著
(講談社現代新書・798円)
◇報道の公共性と倫理への呼びかけ
福島の第一原子力発電所は、旧式の原子炉を温存し、狭い場所に密集して建て並べていた。これが津波による被害を大きくしたのだが、全国には同様に古い原子炉を密集させている発電所が多い。
じつはより安全な新型原子炉も発明されているのに、それが導入されないのは反原発の世論が強く、たとえ改善のためでもいっさいの新設は実現しにくいからだと、著者は冒頭から読者を驚かせる。
反原発派は原子炉に改善がありうる事実を認めないし、電力会社を含む推進派はもし新型の導入を口にすると、現存の炉に問題があることを白状する結果になるからだという。著者はみずから推進派ではないが、このように世論が二分されて、
相互不信からメディアの情報が硬直している現状を憂慮する。現に新聞も先入観から勉強を怠り、科学的にはありえない軽水炉の再臨界の可能性を伝えるなど、実態の弊害は深刻だと警告するのである。