11/05/01 23:38:50.16 zt04x2Yb0
>>520
―私はNセメント会社の、セメント袋を縫う女工です。
私の恋人は破砕器(クラッシャー)へ石を入れることを仕事にしていました。
そして十月の七日の朝、大きな石を入れる時に、その石と一緒に、クラッシャーの中へ嵌(はま)りました。
仲間の人たちは、助け出そうとしましたけれど、水の中へ溺(おぼ)れるように、石の下へ私の恋人は沈んで行きました。
そして、石と恋人の体とは砕け合って、赤い細い石になって、ベルトの上へ落ちました。
ベルトは粉砕筒(ふんさいとう)へ入って行きました。
そこで鋼鉄の弾丸と一緒になって、細(こまか)く細く、はげしい音に呪(のろい)の声を叫びながら、砕かれました。
そうして焼かれて、立派にセメントとなりました。
骨も、肉も、魂も、粉々になりました。私の恋人の一切はセメントになってしまいました。
残ったものはこの仕事着のボロ許(ばか)りです。
私は恋人を入れる袋を縫っています