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家庭や飲食店でのコンポストの利用がすすめられるなか、ニューヨーク州で議論されているのが「人間の遺体の堆肥化」だ。2050年までに温室効果ガスの排出を削減する同州の措置の一環として、先日2人の州議会議員が人間の堆肥化を合法とする法案を議会に提出した。
遺体を堆肥化するには、「ナチュラルオーガニックリダクション」と呼ばれるプロセスが用いられる。ごく最近生まれた葬儀方法で、すでにワシントン州、コロラド州、オレゴン州で合法化されており、ニューヨーク州でこの法案が成立すれば、遺体の堆肥化が認められる4番目の州となる。
もともとキリスト教信者の多いアメリカでは、その死生観から土葬の慣習があった。しかし、経済的負担や手軽さを理由に火葬が普及し、2015年頃には火葬の数が土葬の数を上回り、状況が逆転。NFDA(全米葬儀ディレクター協会)によると、2019年の火葬率は54.5%だったが、2040年には78.4%に増加すると予測している。
一方で懸念されるのが、火葬による環境負荷だ。火葬には大量の燃料が必要となる。そのため、「グリーン葬儀」へのニーズが高まっているという。今回の法案が実現すれば、「堆肥葬」や「コンポスト葬」の選択肢が可能になる。
ワシントン州でグリーン葬儀サービスを提供するリターンホーム(ReturnHome)では、すでに多数のニューヨーク州民から問い合わせを受けているそうだ。
「60日で土に還る」人間の堆肥化のプロセスは
人間の遺体を堆肥にするためには、まず遺体を藁(わら)、アルファルファ(植物)、おがくずなどの有機物と一緒に箱に密閉する。この箱をHVACと呼ばれる空調システムに接続し、その間に遺体が分解される。
30日経ってから無機物が含まれていないか確認し、残った骨は砕いて箱に戻される。さらに30日後、できた堆肥と残った遺骨が家族の元に返還される。上述のリターンホームでは、最大約181kgの堆肥を故人の家族に届ける。
同社の料金は、4,950ドル(約63万6,300円)。パッケージには、ワシントン州オーバーンにある施設への輸送料金、堆肥化、死亡診断書などの必要書類の準備、できた堆肥を家族の元に還すといったサービス内容が含まれる。
同社のトゥルーマンCEOは、土葬と火葬は「持続不可能」と指摘している。「ニューヨーク州をはじめとした州がこのプロセスを合法化すれば、地球に本当にやさしいデスケア(死のケア)が広がるだろう」
どのように人生の最期を迎えるかといった話はとてもデリケートな内容のため、公然と議論されにくい側面がある。しかし、地球環境を考えた新しい選択肢が生まれていくことは、私たちにとってもいいことと言えるかもしれない。
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