自分でバトルストーリーを書いてみようVol.28at ZOID
自分でバトルストーリーを書いてみようVol.28 - 暇つぶし2ch228:襲来! 宇宙大機怪獣 後編 10 ◆h/gi4ACT2A
09/01/14 21:22:01
『モルスァ!』
意味は不明だが、少なくともファビスターにダメージがあった事は確実だった。
『キングミサイル!!』
キングゴジュラスはやや後退しながら口腔内に装備されたTNT火薬数百トン分に相当
する“キングミサイル”をファビスターへ撃ち込み、手近なビルをも巻き込む程の大爆風
がファビスターを飲み込んで行く。
『思った通りだ! コイツエネルギー兵器は吸収出来ても質量兵器は吸収出来ねぇ!』
だが、これだけで倒せる程甘い相手では無い事はキングゴジュラスにも分かる。そして
次に彼が取った行動は、瓦礫の下敷きになったスペースカイザーのサルベージだった。
「あ…ありがとう…。キング君…。」
『礼は後だ! 俺とお前で協力して何としても奴を倒すぞ! 正直言うと俺がこの姿を
意地出来るのは数分間しか無い! その前に奴を倒さなければこの星は終わりだ!』
「分かった! そして済まない…。元々無関係な君を巻き込む事になって…。」
『だからそういうのは後だと言っただろうがぁ!!』
「そうだね!」
直後、キングゴジュラスとスペースカイザーは同時に駆け出した。目標は未だ巻き上がる
大爆煙の中に潜むファビスター。“王”の名を持つキングゴジュラスと“皇帝”の名を持つ
スペースカイザー。王と皇帝の共闘だ。
『ファー!』
爆煙の中から姿を現し、可愛らしくも恐ろしい雄叫びを上げるファビスターだが、次の
瞬間キングゴジュラスの助走を付けて勢いを増した正拳付きが腹部を直撃していた。
『モルスァ!』
かつては通じなかったはずの攻撃だが、今のキングゴジュラスは勢いに乗っているせいか
ファビスターは怯んだ。だがそれだけでは無い。ファビスターが怯んだ隙を突きスペース
カイザーが右手に持つ巨大な斧を振り上げ、地面と垂直に振り下ろしたのだ。

229:襲来! 宇宙大機怪獣 後編 11 ◆h/gi4ACT2A
09/01/14 21:24:08
『ファーブルスコファー!』
ファビスターが苦悶の表情を浮かべ苦しみ叫んだ。スペースカイザーの斧がファビスター
の腹を切り裂いたのだ。まるで青汁の様な緑色の体液を撒き散らし、自身の毛を染めた。
『うわ! 緑色の血なんて…流石は宇宙機怪獣。この星の生物とは違うぜ!』
ファビスターの緑色の体液に改めて感心するキングゴジュラスであったが、その直後…
『ファ―――!!』
ファビスターの円らな瞳が細くなり、その口から放たれた熱線がキングゴジュラスと
スペースカイザーを飲み込み、押し流していた。そう、先の攻撃も所詮はファビスターの
怒りを買うだけに過ぎなかったのである。そして、数百メートルに渡って吹飛ばされた
キングゴジュラスとスペースカイザーは装甲表面が焼け付いた姿で倒れていた。
『アチチチチ…。』
「あれだけやってまだこれ程の余力が…やはり…奴を倒す事は出来ないのか…?」
何とか立ち上がる両機だが…先程までの格好良さが嘘の様に弱々しい。だがそんな事も
構わずファビスターは一気に畳み掛けようとドタドタと音を立てて接近して来るのだ。
『ファー!』
『くそぉ! こうなったら…ダメもとでやってやる!! スーパーガトリング!!』
突撃して来るファビスターの正面に立ったキングゴジュラスはその胸部に装備された
スーパーガトリングを撃ち放った。数千発の超高出力エネルギー弾丸がファビスターへ
襲い掛かるが…それもやはりファビスターの腹部で吸収されてしまうだけだった。
「もう忘れたのかい!? ファビスターにエネルギー兵器の類は…。」
『そんなの分かってる!! だがな…どんな大食いチャンピオンだって食い続ければ
何時かは腹を壊すんだ!! 奴だって無限にエネルギーを吸収する事は出来ないはず!
俺のエネルギーが尽きるのが先か…てめぇの限界が来るのが先か…勝負だぁ!!』
キングゴジュラスの狙いはそこだった。正直勝算は無い。下手をすればファビスターの
エネルギー許容量はキングゴジュラスのエネルギー総量さえ遥かに超えているかも知れ
ないからだ。だが、今の彼にとってこれ以上に良い方法は浮かばなかった。

230:襲来! 宇宙大機怪獣 後編 12 ◆h/gi4ACT2A
09/01/15 23:27:20
『うおおおおおおおおおおおお!!』
キングゴジュラスは力の限り叫び(ただし、スーパーサウンドブラスターはOFF)
持てる限りのエネルギーをスーパーガトリングへ注ぎ込み、ファビスターへ撃ち込んだ。
そうなれば当然ファビスターもスーパーガトリングのエネルギーを吸収して行くが…
『モルスァ!』
ファビスターが口から煙を吐いて後退し始めた。キングゴジュラスの予想通り、
ファビスターにも限界があった。そして、キングゴジュラスのエネルギーはそれに
打ち勝ったのだ。しかしキングゴジュラスの消耗も半端な物では無く、忽ち片膝を付く。
だがそれでもキングゴジュラスはファビスターを指差し叫んだ。
『カイザ今だぁ!! その斧で奴をぶった斬れぇぇぇ!!』
「分かった!!」
ファビスターが許容量以上のエネルギーを吸収し、弱った今しかチャンスは無い。
スペースカイザーは残る力の全てを懸け、突撃した。直後、頭部に輝く二本の角から
放たれた稲妻が斧をスパークさせて行く。
「食らえファビスター!! サンダァァァァトマホォォォク!!」
スペースカイザーの稲妻の力を付加した斧による渾身の一撃は…ついに…ついに…
ついにファビスターのその強靱な身体を切り裂き…両断していた………………。

231:襲来! 宇宙大機怪獣 後編 13 ◆h/gi4ACT2A
09/01/15 23:28:28
しばらくして…キング・トモエ・カイザの三人は最初に出会った山の上にいた。
「ありがとう。そして申し訳ありません。ファビスターを倒す為とは言え、結局貴方達の
力を借りてしまう事になって…。特にキング君はかなりの怪我をしてしまったのでは?」
「大丈夫! どうって事はねーよ! 鍛え方が違うんだ!」
「何を言うか! 一々怪我を治すわらわの身になって見るが良い!」
キングゴジュラスの状態で負った損傷は人間の身に戻った後も残る。並の戦力が相手なら
小さな傷も負わないが、機怪獣との戦いとなるとそうは行かない。キングゴジュラスと
言えども傷を負う事は度々あり、それを後でトモエが魔術的に治療したりと言った
アフターケアが行われていたのだが、今もやはり服を脱いで上半身裸になったキングの
背にトモエが手を当てて治療なんかしていたりした。
「それでは私はもう行きます。二人ともお元気で。」
「ああ。お前こそ、宇宙で迷子になったりするなよ。」
「達者で暮らすんじゃぞー。」
スペースカイザーに乗り込むカイザに対し、キングとトモエは手を振って見送る。そして
スペースカイザーを起動させたカイザは、その頭部のカメラを通して二人を見つめた。
「本当にありがとうございました。このご恩は忘れません。何時か…何かしらの方法で
恩を返したいと思います。それでは……さようなら。」
「ああ。期待しないで待ってるぜ。」
キングとトモエに見送られる中、スペースカイザーは浮き上がる様に飛び上がると共に
天高くへ昇って行った…………。

232:襲来! 宇宙大機怪獣 後編 14 ◆h/gi4ACT2A
09/01/15 23:29:32
「長い戦いもやっと終わったな……。」
「終わった? わらわとしては始まったんじゃと思うがのう。」
「何?」
「考えても見るが良い。今回の事で宇宙にも機怪獣がいる事が明らかになったのじゃ。
もしかしたらファビスターと同等…もしくはそれ以上の宇宙機怪獣が飛来する可能性は
決してゼロでは無いと思うがのう…。そういう事はあって欲しく無いが……………。」
「………………………。」

キングゴジュラス&スペースカイザー対宇宙大機怪獣ファビスターの戦いは終わった。
それはキングゴジュラスが初めて体験した宇宙機怪獣との死闘であった。
しかしこれは本当に終わりと言えるのだろうか? トモエの予感した通り……
宇宙機怪獣との戦いの始まりを告げているのでは無いのだろうか?
もしかしたら…新たな宇宙機怪獣が惑星Ziのすぐ側まで迫って来ているのかもしれない。
真実は…神のみぞ知る所である。

                  おしまい

233:名無し獣@リアルに歩行
09/02/01 16:21:00
定期age

234:名無し獣@リアルに歩行
09/02/01 17:48:11


235:古代の指紋 1 ◆h/gi4ACT2A
09/02/07 23:08:09
その昔…惑星Ziに降り注いだ隕石群との戦闘で致命的な傷を負い、搭乗者であった
ヘリックⅡ世に秘匿の為自爆させられた悲劇の最強ゾイド・“キングゴジュラス”
本来ならばそこで彼は炎の海の中にその巨体を沈めるはずだった…。しかし、そこを
たまたま通りがかった正体不明の悪い魔女“トモエ=ユノーラ”に魔法をかけられ、
命を救われたのは良いけど、同時に人間の男の娘(誤植では無く仕様)“キング”に
姿を変えられ、千年以上の時が流れた未来へ放たれてしまった。正直それは彼にとって
かなり困るワケで…自分をこんなにした魔女トモエを締め上げ、元に戻して貰う為、
トモエから貰った強化型レイノスを駆り、世界中をノラリクラリと食べ歩くトモエを
追って西へ東へ、キングの大冒険の始まり始まり!

      『古代の指紋』      岩石機怪虫グランドワーム 登場

それはとある荒地の上空を通りがかった時だった。突然キングの搭乗するレイノスが
何者かからの対空砲撃を受けたのだ。
「うわ! 何だ何だ!?」
慌ててキャノピーに顔を近付けて陸の方を見下ろして見ると、そこには多数のゾイドが
レイノスへ向けて砲撃を繰り返しているのが見えた。ガイサックやステルスバイパー、
モルガ等の小型ゾイドで編成されてはいるが、軍隊の様に統率されているわけでは無い。
そう、彼等は良くある野盗の類だった。
「撃て撃て! 多少壊れた所でレイノスともなりゃそれなりに売れるってもんだぜ!」
と、如何にも野盗と言った風な言葉を吐き捨てる者まで現れる始末。しかし、キングとて
そうやすやすとやらせる男では無かった。
「カスどもが…俺を狙った事を後悔させてやる!」
キングはレイノスを急降下させ、地を這うガイサックを胸部の三連ビーム砲で蜂の巣にし、
脚部の鋭い爪でステルスバイパーを掴み上げ、切り裂き持ち上げると共に高空から落とし、
破壊した。力量的には野盗よりキングの方が遥か上。だがその慢心がキングに心の隙を
作った。

236:古代の指紋 2 ◆h/gi4ACT2A
09/02/07 23:09:03
「うわっ!」
やたら滅多に撃ちまくる野盗側のゾイドの砲撃の一発が低空飛行中のレイノスの翼に直撃
していたのだ。それでも当たりは浅く飛行不能にはならなかったが、体勢は大きく崩れ、
次に攻撃が来たら回避出来る様な物では無かった。
「うわまずった!」
慌てて操縦桿を力一杯引き、レイノスを上昇させようとするキングだが時既に遅し、
「レイノス一丁上がりー!」
ガイサックが大きく減速したレイノスへ向けて飛び掛っていた。万事休すか? そう思わ
れたその時…何処からか放たれた一撃がガイサックを撃ち抜いていた。
「何!?」
これには野盗のみならずキングも驚かざるを得ない。しかし、その後さらに野盗側の
ゾイドが次々に撃ち抜かれて行ったのである。
「くそ! 仲間がいやがったのか!? 退け退けぇ!」
野盗側のリーダーと思しき男が慌ててそう叫ぶと共に、野盗側のゾイドは忽ち逃げ出し、
キングは呆然としながらもレイノスを着陸させていた。
「助かったのはありがたいが…一体何が起こったんだ?」
キングは呆然としながら地平線の彼方へ逃げ去って行く野盗のゾイド達を見つめていたが、
そこで突然背後から話しかけられた。
「大丈夫だった?」
「うわ!」
驚いて思わずレイノスごと驚いて飛び退いてしまったが、そこにはステゴガンツァーの
ロングガンツァーキャノンをライフルの様に左腕に装着した“LBゴジュラスMK-Ⅱ”
とサビンガをベースに首と胴体をブロックス一個分長くしてフェレット型に作り直した
さしずめ“フェレッツ”とでも呼ぶべき二体の姿があった。

一時して、近くの岩山の陰にキングのレイノスと、彼等を助けてくれたLBゴジュラス
MK-Ⅱとフェレッツの姿が見られた。
「いやぁ…本当済まんな。あんた等が助けてくれなかったら危なかったぜ。」
「なに…困った時はお互い様だよ。」
「そうそう。そゆこと。」

237:古代の指紋 3 ◆h/gi4ACT2A
09/02/07 23:10:49
ここで会ったのも何かの縁と、キングは知らず知らずの内に相手と話をしていたのだが、
フェレッツとLBゴジュラスMK-Ⅱの一行は古代遺跡発掘の旅をやっている様子だった。
まずフェレッツに乗っていたのは旅の考古学者で“ユナイト=スクーラ”と名乗った。
学者と言っても机に向かうよりも直接発掘作業をやったりする方が好みなタイプらしい。
金髪と緑色の瞳を持ち、キングとはまた違った意味で女性的な顔をした美男子。そして
彼が使うフェレッツも、探索用でレーダー・センサー・情報処理コンピューターに関して
かなり高性能な物を積んではいたが、戦闘用では無いらしく武装の類は見えなかった。
続いてLBゴジュラスMK-Ⅱに乗っていたのはユナイトの助手兼ボディーガードで
“ナナ=ハイター”と名乗った。細身でありながら大きめなライフルを平然と携帯して
いたりする等、何気に豪快な女性。彼女も彼女で腰まで伸びた栗色の長髪の美人なのだが、
ユナイトが男なのに女性的な顔してるせいで結構普通に見えていた。なお、先程野盗に
襲われた時に助けてくれたのはナナの操縦するLBゴジュラスMK―Ⅱによる精密な
射撃による物との事。

そこでキングはユナイトとナナの二人と話をする中で、二人が世界中に点在する古代遺跡
発掘の旅をやっていると言う事を聞いた。
「遺跡発掘の旅ね~。でも遺跡の類なんて昔から発掘され尽くされてるんじゃないのか?」
「そんな事は無いさ。確かに君の言う通り世界中の遺跡の多くが既に発掘されてはいる
けど、それが全てじゃない。まだ発見されてさえいない古代の遺跡は沢山眠ってるはず
なんだ……多分。」
「どうでも良いけど多分はやめてくれ…。」
最後の一言が余分過ぎてキングも呆れてしまう程だったが、それでも二人の熱意が本物
だと言う事は理解出来た。
「まああんた等には助けてもらった恩もあるし…俺はお前等を応援する事にするぜ。」
キングは立ち上がり、隣に立つ岩山に手を当てて寄りかかった。と、その時だ。突然
岩山のキングが掌を押し当てていた部分がまるで押されたボタンの様に沈み込み、地面が
若干振動したかと思うとそこから地下道の様な物が現れたのだ。しかもその地下道は
どう見ても自然物では無く、人工の物だった。

238:古代の指紋 4 ◆h/gi4ACT2A
09/02/07 23:12:14
「な!? なぬ!?」
「こんな所に古代遺跡の入り口が…?」
「にしても…何かご都合主義過ぎない?」
余りにも突然すぎる事態にキングは愚か、ユナイトとナナの二人も呆然とするばかり。
「し…しかし…棚から牡丹餅と言う言葉もあるからね…。世の中には何気無く穴を掘って
いたら温泉が湧いたり石油が噴出したりで一夜にして大金持ちになった人だっているんだ。
それみたいな事が起こったと言う事なんだと思う…。」
「う~ん…。」
とりあえず世の中には何が起こるか分からない。そういう事である日突然遺跡を発見して
しまっても可笑しくは無いと言う事にして、三人は地下道の入り口から遺跡へ入った。

三人は灯りを灯しながら地下道を進んでいたが、その地下道は金属分を多大に含んだ岩石
を綺麗に削り出して作った様な物で、明らかの古代人の技術力の高さを思わせる物だった。
「この遺跡は…恐らく第一文明人の物だね。」
「第一文明人?」
ユナイトの口から発せられた“第一文明人”と言う言葉にキングは首を傾げた。
「惑星Ziの文明には大きく分けて三つの文明があるんだ。まず俗に“神々の怒り”と
呼ばれる大災害以降に復興し栄えた現代の文明。それを僕達学者達の間では“第三文明”
と呼んでいる。そして、第三文明以前に存在した、地球と言う異星文明の技術を取り
込んで栄えたけど、神々の怒りによって滅んでしまった文明…“第二文明”今一般的に
使われているゾイドや技術の大半は第二文明の遺産でもあるんだ。」
「なるほど…。(確か似た様な事を以前トモエの奴が言っていたな。)」
「そして…さらにそれ以前にあったとされる文明。俗に“古代ゾイド人”と呼ばれる
者達が作り上げた文明…それが第一文明。彼等は第三・第二文明を遥かに凌ぐ文明を
持っていたとされているんだ。」
「話には聞いた事があるが…そんなに凄いのか!? 第二文明だって異星人の技術を
取り込んで発展したんだろう?」
実質的に第二文明最強の兵器であり、同時に地球人の技術が最も使用されていると言える
キングゴジュラスたる彼としては、古代ゾイド人が作り出した第一文明についてかなり
気になる所があった。

239:名無し獣@リアルに歩行
09/02/07 23:18:46
乙!!
期待なんだが厨くさい機体は出すなよ・・・
既存機体でやってくれ

頼む><

240:古代の指紋 5 ◆h/gi4ACT2A
09/02/08 21:01:53
「第二文明まではある程度解明が進んでいるけど、第一文明の研究はまだ大して進んで
いないんだ。第一文明の遺産に関しての研究は第二文明の頃にも行われていて、それが
オーガノイドシステム等と言う形で今の時代…第三文明にも受け継がれているけど、
それでも第一文明の全てを解明するには至らなかった。だからこそやりがいがあるんだ。
高度な文明を誇った第一文明の遺産は今の時代になっても何処かで眠っているはず。
それを発見し、解明する事が出来れば人々の生活を良くする事だって出来るじゃないか。」
そう語るユナイトの目は本物であり、熱意が感じられた。しかも彼だけで無く…
「そうだね! 私もユナイト君に何処までも付いて行って、その夢をかなえるお手伝いを
してあげたい!」
「ありがとう! ナナ!」
「あ~…お熱いこって…。」
手を取り合って目を輝かせているユナイトとナナの二人にキングも呆れてしまうが、
そこで彼はある物を発見した。
「ん…これは…。」
「古代の…壁画かな…?」
三人の正面の壁に描かれたのは古代の壁画だった。古代遺跡には必ずと言って良い程良く
あるパターンであるが、それだけに重要な古代のメッセージが隠されている要素でもある。
それはゾイドと思しき巨大な生物が街と思しき建造物を焼いている壁画。他の者ならば、
第一文明人の間にも戦争はあり、その事をイメージした壁画と考えるのだろうが…
キングにとっては違った。
「これは…機怪獣…じゃないのか…?」
壁画に描かれた街を焼く巨大な生物…それがキングには機怪獣に感じられた。確かに
通常ゾイドの中にも街を焼く事は可能な物もある。ましてや第二・第三文明を超える
技術を持っていたとされる第一文明人なら強力なゾイドを幾つも持っていたに違い無い。
だが、それを踏まえてもなおキングには機怪獣の気配を壁画から感じ取っていたのだ。
「しかし…この壁画に描かれているのが機怪獣としたら…第一文明の時代から既に
機怪獣の脅威はあったと言う事になる…………。」

241:古代の指紋 6 ◆h/gi4ACT2A
09/02/08 21:02:53
確かにキングは以前“魔牛機怪獣ディバタウロス”と言う機怪獣と一戦交えた事があった。
これもトモエいわく“第一文明人でも完全に滅ぼす事が出来なかった”らしく、キング
ゴジュラスとしても次元の彼方へ吹飛ばすしか対処方法は無かった。しかし、それさえも
氷山の一角に過ぎず、第一文明人は多数の機怪獣の脅威に苛まれていたと考えると…
流石のキングも寒気がして来ていた。
「だが俺が元いた時代…第二文明の頃に機怪獣の類がいたと言う話は聞いた事が無かった。
でありながら最近になって突然機怪獣が次々現れ始めたのは…何かあるんじゃないのか?
何かの…何かの前触れでは…………。」
キングはユナイトとナナの事などすっかり忘れて考えに耽っていたのだが…そんな時、
突然地面が揺れ始めたのである。
「うわ!」
「地震か!?」
地震と思しき謎の振動は特別大きい物では無かったが、間違って古代遺跡が崩れてしまう
事になれば三人が生き埋めにされてしまうのは必至。故に遺跡調査を中断し、慌てて外へ
駆け出した。

地面の揺れによって走り難い中、三人は何とか遺跡の外へ脱出する事に成功した。が、
そこで三人はある光景を目の当たりにするのである。
「あ…あれは?」
「あの時の野盗じゃないか! また俺達に仕掛けて来たってか!?」
「でも…何か様子が違わない?」
遺跡の外に出た三人が見た物とは、先程レイノスに乗ったキングに襲い掛かって来た野盗
のゾイド軍団であった。しかし様子が違った。彼等はキング達に仕掛ける事は無く、別の
何かと戦っている様に思えたのである。だが、彼等が戦っていると思しき相手の姿は
見えない。これには首を傾げる三人であったが…その時またも地面が揺れた。

242:古代の指紋 7 ◆h/gi4ACT2A
09/02/08 21:04:11
「さっきの地震だ!」
「あ! あれを見て!」
慌ててユナイトがある方向を指差した時、三人は愕然とした。何故ならば、地面の下から
巨大な芋虫の様な巨大生物が姿を現し、野盗のゾイド達を襲っていたのだ。一見すると
野性モルガに見えなくも無いが、その身体を覆う外皮はまるで岩石の様にゴツゴツとした
物となっており、特に体長は五十メートルはありそうな程の巨体だった。あえて名を
付けるならば…“岩石機怪虫グランドワーム”とでも呼ぶべきか?
「何あの巨大な芋虫は!」
「あんな物が暴れ出したらこの遺跡も一溜まりも無く崩されてしまうじゃないか!」
ユナイトとナナの二人は機怪獣の類を見るのは初めての様子であり、かなり戸惑っていた
のであるが、直後にキングが二人の前に出た。
「お前等! ここは俺が何とかする! 今直ぐゾイドに乗って逃げろ!」
「逃げろって言ったって…君も逃げないと!」
ユナイトは慌ててキングの手を掴み引っ張ろうとするが、それをキングは払い除けた。
「俺の事は良いからお前等だけで逃げろ! 奴は並の戦力でどうこう出来る相手じゃない
んだ!」
「確かにあれは見るからに並の戦力じゃどうにも出来なさそうだけど…だからこそ
なおさら君も逃げないと危ないじゃないか!」
「そうだよ! だからキング君も逃げなきゃ!」
ユナイトとナナの二人は心配そうな眼差しでキングを見つめるが、キングはかすかに
笑みを浮かべていた。
「俺の事心配してくれてんのか…ありがとうよ…。だが…あんた等にはあの時助けて
貰った恩がある。だからこそお前等には傷一つ付けさせねぇ! 今度は俺がお前等を
助ける番だ!」
「助ける番って…あんな怪物相手に一体どうすると言うんだい!?」
「こうするんだよぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
直後、キングの水色の頭髪の中で何故かそこだけ真紅に輝き逆立つアホ毛が真紅のオーラ
の様な物を発しながら燃え上がった。そして真紅のオーラはキングの身体を包み込み…
彼はキングゴジュラスへ変貌を遂げていた。

243:古代の指紋 8 ◆h/gi4ACT2A
09/02/08 21:06:01
「うわあああああああああ!!」
「キング君が何か大きなゾイドになったぁぁぁぁぁぁ!!」
ユナイトとナナの二人はそれぞれの美貌が台無しになってしまう程にまで物凄い顔で叫ん
でいた。無理も無い。目の前でキングがキングゴジュラスへ変わる様を見せられては…。
『詳しい説明は後だ! 俺が奴を引き付けている間に逃げるんだ!』
キングゴジュラスは驚愕する二人に構う事無くグランドワームへ突撃した。

岩石機怪虫グランドワームはなおも野盗達の乗るゾイド…ガイサックやステルバイパー、
ヘルディガンナー等を無差別に襲っていた。
「うわぁぁぁ!! バケモンだぁぁぁ!!」
「母ちゃん助けてぇぇ!!」
怖い物無しの荒くれ揃いのはずの野盗がまるで子供の様に情け無い悲鳴を上げて行く。
それだけグランドワームは常軌を逸した怪物だった。中にはそれでも必死に応戦する
勇気ある野盗とゾイドもいたが…グランドワームの全身を覆う岩石状の頑丈な外皮に
通用するべくも無かった。
『どけどけどけ! コイツは俺の獲物だぁぁ!!』
そこで現れたのがキングゴジュラス。大口を開けて野盗のゾイドを丸呑みにしようとして
いたグランドワームにショルダータックルを仕掛け、大きく怯ませていた。
『さあ来い! こうなった俺は他の連中程優しくは無いぞ!』
別に野盗を助ける義理は無いが、このままグランドワームが暴れ続ければユナイトとナナ
の二人にも被害が及ぶ。それだけはキングゴジュラスとしても防がねばならなかった。
二人はキングにとって恩人なのだから…。

244:古代の指紋 9 ◆h/gi4ACT2A
09/02/09 22:12:13
『そらぁ!』
キングゴジュラスは続けてグランドワームの岩石状の外皮に拳を撃ち付けめり込ませる。
しかし…まあ何と言うか…何時もの事なのだけどね…決して通じていないワケでも無いの
だけども…特別決定的と言うダメージを与えられているワケでも無かった。
『く…毎度の事だが…機怪獣って奴ぁ何てタフネスだよ…。』
超重装甲だろうがヘルアーマーだろうが簡単に打ち砕けるキングゴジュラスの拳を持って
しても決定打になり得ない機怪獣のタフネスにはウンザリする程だったが、愚痴った所で
事態が好転する物では無い。キングゴジュラスは一度退いて体勢を立て直そうとするが
グランドワームはそうはさせまいと体当たりを仕掛けて来た。
『うぉ!』
全長五十メートルと言うキングゴジュラスを超える体躯と、芋虫の様な形状からは想像も
付かない俊敏な動きでヘビの様に身体をくねらせ、まるでモルガの様に頑強な頭部を
キングゴジュラスの腹部へ向けて叩き付けて来た。とっさに両腕でグランドワームの頭部
を掴み受け止めるが…その勢いまでは止められず、後方にあった岩山にまで押し出され
叩き付けられてしまった。幸い古代遺跡のあった岩山では無かったが、崩れた岩石が
雪崩の様に押し寄せ、キングゴジュラスは岩石の下敷きにされてしまった。
『だぁぁぁ! ふっざけんじゃねぇぞぉ!! 俺がこの程度で死ぬかぁぁ!!』
機怪獣が常識を超えたタフネスを持っている様に、キングゴジュラスのタフネスもまた
常識を超えている。岩石の下敷きにされた程度で死ぬはずが無い。逆に岩石を吹飛ばし、
グランドワームへ岩石を打ち付けつつその場を脱し、一度下がって体勢を立て直した。
『まああちらも岩石打ち付けた所でダメージにはなってないし…さてどうするか…。』
ファイティングポーズを取りつつ次の手を考えたいキングゴジュラスだが、何時までも
グダグダと悩んでいる性質では無いし、そんな暇も無い。考えている余裕があるなら
行動するべしである。
『ええい! こっちの攻撃だって決定打にならないだけで通じて無いワケじゃないんだ!
ならば決定打になるまで攻撃あるのみだ!』

245:古代の指紋 10 ◆h/gi4ACT2A
09/02/09 22:12:48
キングゴジュラスは再度攻撃に移るべく跳んだ。510トンの超重量からは想像も
出来ない軽やかなジャンプによって忽ち数百メートルの高さまで上昇し、そこから落下の
勢いを加え…
『食らえ! キングゴジュラス流星キィィィック!!』
必殺“キングゴジュラス流星キック”をグランドワームの背に叩き込んだ! そうなれば
キングゴジュラスの強靱な脚がグランドワームの背に深々とめり込み、グランドワームは
口から大量の体液を吐き出し苦しみのた打ち回り始めたでは無いか。
『よし! これはダメージ大と見たな!』
キングゴジュラスはさらに畳み掛けんとグランドワームの岩石状の外皮へ向け拳を何発も
打ち付け続けて行く。しかし…直後、グランドワームは口から黄色く変なブツブツの
混じった様な体液をキングゴジュラス目掛け吐き散らした。
『うわ! 汚え!』
グランドワームの吐き散らした液体が何とも汚そうだった故、キングゴジュラスも思わず
その場から飛び退いてしまうが、それが大きな隙となった。今度はグランドワームが
まるでヘビの様にキングゴジュラスの身体に巻き付き、締め上げ始めたのだ。
『しまった!』
当然キングゴジュラスは自身に巻き付いたグランドワームを跳ね除け、脱しようとするが
腕ごと巻き付かれてしまっている故にどうする事も出来ない。その上からさらに物凄い
力で締め上げて来るのだ。キングゴジュラスの強固な装甲が忽ち悲鳴を上げる。しかも…
『うっ! もうタイムリミットなのか!?』
キングゴジュラスの首下のライト部…ガンフラッシャーが点滅を開始した。彼がキング
ゴジュラスとしての姿を維持出来る時間に限界が近付いている証拠。もしこの状態で
人間の姿に戻ってしまえば敗北は必至。だが、グランドワームは情け容赦無く締め上げ
続けている。万事休すか…そう思われた時…突如何処からか放たれた一発の砲弾が
グランドワームの片目に撃ち込まれたのだ。
『何!?』
一体誰が…キングゴジュラスも思わず戸惑うが…砲弾の来た方向を見ると…そこには
宙を華麗に舞うナナのLBゴジュラスMK-Ⅱの姿があった。

246:古代の指紋 11 ◆h/gi4ACT2A
09/02/09 22:14:01
『こら! お前等逃げろっつったろうが!』
「今はそんな事言ってる場合じゃないでしょ!?」
余程コンパクトにして高性能なマグネッサーシステムを積んでいるのであろう、ナナの
LBゴジュラスMK-Ⅱは、その重武装からは想像も出来ない程にまで軽やかに宙を舞い、
かつその状態から正確にグランドワームの目へ砲弾を撃ち込んで行ったのだ。頑強な
グランドワームとて目は急所と行っても良い。忽ちグランドワームの両目は潰され、
苦しみのた打ち回る。そうしている間にキングゴジュラスも脱出する事が出来た。
「あの巨大芋虫の外皮は頑丈だ! だから関節部分を狙うんだ!」
今度はユナイトの声が響き、攻撃ポイントがキングゴジュラスのコンピューターへ流れ
込んで行く。恐らく…それが二人の役割なのだろう。ユナイトが敵の分析と攻撃地点の
指定を行い、そこをナナが攻撃する。そういう意味では二人はそれぞれお互いにとって
必要な存在なのだろう。
『よっしゃぁぁ! ならば食らえぇぇ! ブレェェェドホォォォォン!!』
キングゴジュラスはユナイトの指定した攻撃ポイント…グランドワームの頭部と胸部を
繋ぐ首関節部分に頭部に輝く真紅の角…ブレードホーンを渾身の力で突き刺した。
頑強な外皮を持つグランドワームも関節部分は脆く、苦しみもがき始める。だがそれさえ
構わずキングゴジュラスはグランドワームの首関節にブレードホーンを突き刺したまま
大きく抱え上げ…
『ブレェェェドホォォォォン…サンダァァァァァァ!!』
ブレードホーンから超高圧電流が流し込まれ、グランドワームの全身が忽ちスパークを
起こして行く。そしてブレードホーンを引き抜きつつグランドワームを天高く放り投げ…
『これでトドメだ! スゥゥゥパァァァガトリング!!』
キングゴジュラスの胸部に輝く巨大なガトリング砲…スーパーガトリングから放たれる
数千発の荷電粒子砲・超電磁砲・レーザー砲がグランドワームの全身へ降り注ぎ、
その巨体は木っ端微塵に粉砕されていた……………。

247:古代の指紋 12 ◆h/gi4ACT2A
09/02/09 22:15:38
戦いは終わり、古代遺跡の隠されていた岩山の麓にキングとユナイト・ナナの三人の姿が
あった。
「すまんな…結局またあんた等に助けられちまった。情け無い話だ…。」
「そんな事は無いさ。最終的には君のパワーが無ければあの怪物は倒せなかった。」
「そうそう。お互い様って奴だよ。」
キングとしては二人を助けてくれた恩返しとして何としても助けたかったのだが、結局
またも助けられる形になってしまったのが内心情けなく思えていたのだが、ユナイトと
ナナは落ち込みそうになっているキングを色々フォローしていた。
「すまん…本当にすまん…。だが…あんた中々の腕と見た。何しろ飛行ゾイド顔負けの
速度で飛び回りながら正確に機怪獣の目に砲弾を撃ち込んだんだからな。」
「そうかな?」
ナナのLBゴジュラスMK-Ⅱが飛行出来た件に関しては、コンパクトにして強力な
マグネッサーシステムを積んでいるのだろうと言う事で特に突っ込みは入れなかったが、
そうやって高速で飛行しながらの正確な射撃は相当の腕が無ければ不可能な事だ。
「軍に入ればエースになる事も夢では無いと見たな。」
「いや…夢では無いんじゃなくて…ナナは元々軍のエースだったんだよ。」
「な!?」
あっさり言ってのけるユナイトにキングは唖然とするばかり。流石にこれは斜め上の展開
過ぎるとしか言い様が無い。
「もうユナイト君ったら~! それはもう昔の話だよ~!」
「そうか…。」
軍のエースならもっと良い生活が出来たであろうに…何故こんな自称考古学者な青年と
共に行く道を選んだのかは分からないが…二人にも色々あるのだろう。それ故にキングは
これ以上とやかく言わない事にした。

248:古代の指紋 13 ◆h/gi4ACT2A
09/02/09 22:16:44
「んじゃ…俺ぁもう行くわな。」
「でも僕達はもう少しこの遺跡を調査して見る事にするよ。」
「じゃあキング君も気を付けてね。」
キングは遺跡調査の為に残ったユナイトとナナの二人に見送られながら、レイノスへ
乗り込み、この場を飛び去った。

飛行中のレイノスのコックピットの中でもキングは、古代遺跡の中で見た壁画…第一
文明人の都市を焼く機怪獣を描いた壁画が心に強く残っていた。
「古代遺跡の壁画と言い…突然現れた巨大芋虫と言い…やはり何かある。最近になって
突然機怪獣が出現する様になっているのは絶対何かがあるんだ…。」
ここ最近の機怪獣の多発はキングにさらなる不安を掻き立てる。何しろキングゴジュラス
たる彼を持ってしても苦戦は必至な程の戦闘力を持っているからだ。
「これは…もっと強くなる必要があるのかもしれんな…今よりさらに…。」

キングは…さらなる戦いの予感を胸に秘め…レイノスは空の彼方へと飛んで行った………

                  おしまい


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