10/05/31 21:16:11
隣人と仲良くするのはいいが、お互いの家計にまで立ち入ってはならない―。そんな教訓が頭をよぎる新構想が、鳩山首相の周辺から
持ち上がっている。突如浮上した「日中合成通貨」なるものだ。
銀座を歩くと、たくさんのブランド品の買い物袋をぶら下げた中国人観光客を見かける。最近では高級クラブでも、男性客の発する中国語
が聞こえてくる。中国の強大な国力、とりわけその経済パワーを身近に感じることが多くなった。
そんななか、鳩山由紀夫首相の私的な研究会がこの6月に発表する予定の「構想」が物議を醸している。「鳩山首相は日本を中国に
売り飛ばすつもりなのか?」永田町からはそんな声すら聞こえてくるのだ。
その構想とは、日本の円と中国の人民元を連動させた新たな通貨「日中合成通貨」を創設するものである。提唱するのは「国家ビジョン
研究会」。鳩山首相の私的な勉強会として09年2月に発足し、日米関係や財政、環境、雇用などについて新たな国家ビジョンを策定する
ことを目的に、有識者約100名で構成されたシンクタンクである。研究会は10年1月に「日本再生プラン」を発表しているが、この6月7日に
発表されるその第2弾に、「日中合成通貨構想」が盛り込まれる予定だ。
そもそも日中合成通貨とは何なのか。これを発案したのは、国家ビジョン研究会のメンバーである東洋大学・中北徹教授である。
09年10月7日付の日経新聞に中北氏が寄稿した『「アジア共通通貨」への布石』を読み解くと、次のようなものと考えられる。
現在、日中間の決済では、円と人民元を直接交換せず、いったんドルに交換する2段階の取引になっているが、ドルが介在しない、
円と人民元の直接決済にする。その一環として、円と人民元をそれぞれ一定の比率で組み合わせた新たな通貨「日中合成通貨」を作り、
決済に利用する。将来的にはEUにおけるユーロのような、アジア共通通貨に発展させるという構想である。
中北氏はこれを導入するメリットとして、「銀行同士の決済が安全で便利にできるようになれば、銀行間の外国為替市場でも、円と
人民元の直接取引の増加が期待できる」と主張する。つまり、日中間で金融取引、投資が活発化するということである。
■日中間の通貨統合へ道を開く
本誌は、中北氏が与党議員らとのブリーフィングのために作成した「日中合成通貨の創設は可能である」と題されたペーパーを独自
入手した。A4サイズの紙1枚に、「日中合成通貨」実現へのアプローチをまとめたものだ。その一部を抜粋しよう。
・鳩山構想の一環として、アジア共通通貨(基軸通貨)の形成は実現可能。(夢物語ではない)
・日銀と人民銀行が「決済システムを相互接続」し、直結することで、日中合成通貨が可能である。
・消費者が決済の利便性を感じて、慣れ親しみながら、日中間の通貨統合へ道を開く。
・今だったら、中国はこの提案に確実に乗ってくる。
・日銀は官邸からの圧力とお墨付きがあれば、動き出す可能性は大きい。
(中略)
では、日中合成通貨が実現すると、どういうことが起こるのか。ビジネス・ブレークスルー大学の田代秀敏教授(元大和総研主任研究員)は
メリットとデメリットをこう説明する。
「この構想は中国からの投資を呼び込むことが狙いなのでしょう。その点では、確かにメリットはあると言えます」
(中略)
一方で、極めて大きなデメリットがあると指摘する。問題は、日中間の金融取引の増大による、日本からの資産流出だ。
「大手証券会社に聞いた話では、今、支店には『中国国債を買いたい』という問い合わせが殺到している。現在は日本から個人で
中国国債を買うことはできませんが、この“日中合成通貨”なるものが実現すれば、日本から中国の国債を買えるようになります。中国株も
今より低いリスクで買えるようになる。1400兆円とされる日本の個人資産が雪崩を打って中国に流出する危険があるでしょう」
(以下略。全文は「週刊ポスト」誌面でご確認下さい)
ソース(週刊ポスト 6/11号 45~47ページ) URLリンク(www.weeklypost.com)