09/12/18 15:59:35
★米軍3万人増派でもタリバンの勢いは止まらない
ジャーナリスト ジーン・マッケンジー Jean MacKenzie
「テロとの戦い」の名の下に軍閥と結ぼうとしているアメリカ。
だが、それは逆にアフガニスタンの一般市民をタリバンに向かわせることになる恐れがある。
「過去の過ちは繰り返さない」と言うオバマ政権に「出口」はあるか。
[カブール発] バラク・オバマ米大統領がようやくアフガニスタン戦略を公表したことで、
政治家と評論家は賛否両論と今後の見通しを述べ立てるのに忙しい。
だが、議論の大半は米国内向けだ。アフガン戦争への米国民の支持がかつてないほど低くなるなか、
政治家は単に世論を味方につけて自らの立場を良くしようとしているに過ぎない。
本来、最も関心を払われるべきであるアフガニスタンの人々―戦争に疲れ、意気消沈し、
怯えて暮らすアフガニスタンの人々―に対する視線は欠落している。
遠い論争を聞かされるアフガニスタンの人々は、自分たちが最も恐れる二つのことを
地上最強の超大国が一挙にやってしまうのではないかと心配している。
二つの恐怖とは、戦闘の激化、そして最終的には国際社会に見捨てられることである。
「せっかく新たなシステムができようとしていたところなのに、多国籍軍が撤退してしまえば、
すべては終わりだ」。首都カブールに暮らす地元ジャーナリストのナシム・ナシミは落胆を隠さない。
無理もない。もしアフガニスタンの統治が近い将来アフガニスタンの人々だけの手に渡されたなら、
この国はいとも簡単に内戦状態に戻ってしまうだろう。アメリカの介入によって力を増した
「軍閥指導者」たちが、近隣諸国の支援を受けるタリバンと全面戦争に突入し、
アフガニスタン全土を大混乱に陥れることは間違いないからだ。
一方で、外国兵だらけになるアフガニスタンというのも、地元民にとって心弾む光景ではない。
十二月一日にオバマ大統領が発表した計画通りに事が運ぶなら、今後半年の間に米軍は三万人を増派。
NATO(北大西洋条約機構)軍も七千人から一万人の兵力を追加派遣する。
これが多国籍軍とタリバンの戦闘をいっそう激しいものにすることは疑いない。
現に、タリバンが影響力を広げるヘルマンド州(世界最大の麻薬の産地でもある)では、
タリバンによる攻撃が増えている。外国兵士の殉職者は増えるが、
ゲリラ戦に慣れたタリバン側は雲隠れし、地下に潜る。
そして、アフガニスタンの一般市民はこの破壊行為を、わずかな希望と怒りの混ざった
複雑な気持ちで眺めるしかないのだ。
●十倍の兵力が必要
米軍と同盟軍が兵力を増強することで、人口の多い二、三の町にはある程度の
安定がもたらされるかもしれない。たとえば、ヘルマンドに駐留する約一万人の米海兵隊員は、
同州十三の地区のうち、ガルムシルとナワの二地区をタリバンの手から取り戻した。
次の目標はナワザド地区だ。だが、タリバンに背を向けても外国軍が守るから大丈夫だと
地元民を安心させるには、少なくとも現有勢力の十倍程度の兵力が必要だろう。
「兵士を少しばかり増やすだけでは、タリバンの勢いを止めることはできません。
とりわけ、駐留兵が二年よりも短い任期でどんどん交代していくような状態では。
まして、アフガニスタンの治安を抜本的に改善するなど期待すべくもない」と語るのは、
カブールで政治活動をするジャナン・モサザイだ。
「あとどのくらい必要か? 反政府勢力を徹底的に押さえ込むためには、
さらに何十万人もの兵士が必要です」。
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