09/08/15 04:13:02
「私のきょうだいの家にいる母が、どうやら虐待されているようなんです」
7月、盛岡市の特別養護老人ホーム「青山和敬荘」に、中年の夫婦が入所の申し込みにきた。表情は険しかった。
「すぐに入所させて欲しい」
「待機者は230人います。申し訳ないけど『いつ入れる』とはっきり言えないんです」
ホームの担当者は「なんとか入れてあげたくて、切ない気持ちになる。でも公平性も守らなければ……」と顔を曇らせた。
入所の申し込みは年間約100件にのぼる。「一人暮らしの母がストーブで髪を焦がした」
「一日じゅう目が離せなくてつらい」「病院を出なければならないが、家では面倒をみられない」―。
申し込みの理由はさまざまだ。
「すぐに入れて欲しい」という人も少なくないが、施設の80床は満床状態が続いている。
要介護度や家庭環境、介護保険の利用状況などを勘案し、入所の優先順位を決める。1カ月で入れる人もいれば、
10年以上待ち続ける人もいる。入所できないまま亡くなる人もいる。
県長寿社会課によると、県内の特養老人ホームの待機者数は08年3月末で5400人。
そのうち「早急に入所が必要」なのは913人で、2割近くを占める。
県は08~11年度に特養を約1千床、その他の老人福祉施設も含めて計1600床増やすと計画している。
だが、同ホームの北村充・介護福祉士は「施設整備には時間とお金がかかる。
それ以上のスピードで待機者が増えていく可能性は高い」と懸念を示す。
どこで、どんな生活をするか。生き方の根本だけに、自宅での介護を望む人は多い。
このホームでも、入所者の半分ほどは、本人の意思ではなく家族側の希望で入所しているという。
北村さんは「住み慣れた家を離れたくないという本人の思いと裏腹に、
介護が『生活』の大きな部分になってしまう家族の負担は大きい。どちらがいいか、一概には言えない」と難しさを語る。
自宅での介護は、介護サービスや家族の努力などの微妙なバランスの上で成り立っていることも多い。
盛岡市内の自営業の女性(54)は、仕事を終えるとすぐに一人暮らしの義父(86)の家に向かう。
義父が一昨年、自宅で転倒して歩くことができなくなり、車いす生活になったからだ。
義父は入院や家族との同居を断った。介護保険で訪問診療とリハビリを週に2回ずつ、
訪問介護を週に1回受け、女性が食事の支度などをしている。
女性は「父が寝たきりや認知症じゃないから何とか続けられる」と話す。もしも状況が変わってしまったら―。
北村さんは「これから、高齢者はどんどん増える。生き方の選択肢がない現状を改善しなければ、
追いつめられる家族も増えていくだろう」と話す。
国立社会保障・人口問題研究所によると、県内の人口は05年に139万人で、
うち65歳以上は24・6%。今の30~40歳代が高齢者となる35年には、人口104万人、
高齢者比率は37・5%になると予測されている。
遠野市や陸前高田市など14市町村で「住民2人に1人は高齢者」という状況になる。その時、くらしはどうなっているのか。
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asahi.com 2009年08月14日
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