09/03/12 20:24:29
藤田保健衛生大（愛知県豊明市）名誉教授の神野哲夫さん（６８）らが２月末、国際的に孤立し医療水準が
低い北朝鮮を訪れ、若手医師や看護師ら２５０人に最先端の脳手術を教える講習会を開いた。
神野さんは「拉致問題などの国際情勢もあるが、患者に国境はない。発展途上国の医療の壁に、
小さな穴が開けられた」と話している。
旧福井医大（現福井大）で医療を学んだ平壌大の盧英漢（ロヨンハン）教授を通じ、２００６、０７年にも
訪朝して講習会を開いた。３回目の今回は、２月２４日から４日間、邦人医師２人と
仏、豪、インド、イタリアの医師４人で訪れ、本紙に経緯を初めて明らかにした。
平壌大病院は、暗いうえに暖房がなく、氷点下２－３度まで冷え込んでいた。病棟は満員で、
患者たちは厚手のオーバーやマフラーを羽織って寒さをしのいでいた。北朝鮮側の医師約３０人を
前に手術を披露する予定だったが、機器も不足しているため断念した。
コンピューター断層撮影装置（ＣＴ）は画像が不鮮明な古いタイプしかなく、日本の最新機器で
撮影した画像を見せると、医師らは驚いた様子を見せた。盧さんらは「いくらするのか」と尋ね、
「１台数億円はかかる」と伝えると、がっかりした表情を浮かべていたという。
北朝鮮には内視鏡がなく、開頭式で脳手術を行っていた。日本で盛んな内視鏡手術を紹介すると、
「内視鏡とは、どんな大きさか」「どんなふうに見えるのか」「立体的な奥行きは分かるのか」などと、
基本的な質問が相次いだ。
病院周辺には食堂がなく、医師らは「自宅まで１時間ほど歩いて帰り、昼食を取っている」（盧さん）という。
プライドの高い北朝鮮の人々は医療水準が低いことを決して認めないが、病院を去る際には、
院長から「今後もいろいろと教えてほしい」と頼まれた。
神野さんは、太平洋戦争で出征した父を亡くし、苦学して医療を学んだ。４年前に世界脳神経外科連盟の
副会長に就任。「日本の戦後のような状態にある途上国に医療技術を教えたい」との思いから、
連盟の事業としてアジアや中東での講習会を続けてきた。神野さんは「北朝鮮で高度な医療が
すぐ可能になるわけではないが、最先端技術を知ることで目標ができ、レベルの向上につながるはずだ」と話している。
写真：暗い病院内で、北朝鮮の医療機器について説明を受ける神野名誉教授（右端）ら＝北朝鮮の平壌大病院で（本人提供）
URLﾘﾝｸ(www.chunichi.co.jp)
記事元：北朝鮮で脳手術講習 藤田保健衛生大・神野名誉教授(中日新聞)
URLﾘﾝｸ(www.chunichi.co.jp)