08/11/05 10:14:22
>>3の続き
●指揮系統の混乱を宣伝するべきか?
田母神氏はすでに今年4月、空自のイラク活動を違憲とした名古屋高裁判決に関して、あろうことか、
お笑い芸人のギャグを引用して「そんなの関係ねえ」と失言、慌てて「表現が不適切であり、判決自体には
異論を述べる趣旨ではなかった」と釈明しています。これでは転んで受身を覚えない将官ということになります。
調べてみると、ご本人はむしろ良心的なつもりで「将官の説明責任」を大切に考えているらしいことも読みました。
それが自衛隊体内のガス抜きになっているとも聞きますが、これらすべて根本的なところで間違っているという
自覚がありません。
米国のピリピリした空気と比較すれば、まさに不用意な情報発信がいかにリスキーか、という
危機管理意識の欠如を指摘せねばなりません。
「定年退職記者会見」で田母神氏は「解任は断腸の思い」としながら「自分は誤っているとは思わない。
政府見解は検証されるべきだ」と述べています。現役で空自を指揮する立場にあった者が、
上官の命に反してこのような内容を語ること自体が、そもそも大間違いであることが分かっていません。
「説明責任」という言葉の意味を、正確に学びなおす必要があります。
最後に至ってもこんな記者会見をしているのでは「日本国自衛隊は、指揮系統が完全に崩壊している」と、
自軍の命令ラインが成立していないことを将官自ら触れ回っているようなものです。それが分からないのでしょうか?
もし米国でこれが起きたなら、即座に懲戒以上の措置がとられるはずです。法に明確に定められているとおり、
自衛隊の最高司令官は内閣総理大臣で、内閣総理大臣の方針と異なる意見は軍内部で議論すべきものであって、
現役の指揮官がマスコミを呼んで演説することはあり得ません。軍紀の基本が完全に成立していないのです。
旧海軍では「軍人は政治を論ぜず」として「沈黙の艦隊」サイレント・ネイビーということが言われたそうです。
私は本来、この「サイレント・ネイビー」の軍人精神に大変疑問があり『さよなら、サイレント・ネイビー』という
本も書きました。
ところが今回は当の軍人のトップが率先して、混乱した情報を発信するのは、ただただ国益棄損に
直結していることに、むしろ軍人が敏感であるべきではないかと、思わず心配になってしまいました。
「文民統制」に不満があるのかもしませんが、これでは国内でも、世界にも、一切通じません。
本人も周囲も全く自覚していない、こうした軍紀の弛みが、自衛隊としては一番の問題で、
省内からも苦情続出という意味を、ご本人が正確に理解しなければいけません。
「記者会見」を報道したメディアが全く気づいていない様子なので、第一に指摘したく思います。
(続く)