10/03/21 19:15:44
Conclusion ―まとめ
このように、今回の修理は結果的に完全な二度手間になってしまいました。特に、見込んで依頼をし
たつもりだった最初のオーバーホールがほとんど無駄であったというのは衝撃的でした。
最初のオーバーホールについて、問題は二点あります。
1) 機械の重大な問題をいくつも見落としていること。
二番車のホゾと受けの磨耗、文字盤下側のテンプ受石留板のネジ折損は、「オーバーホール」と呼ぶ
に値するだけの分解整備を行っていて「気付かなかった」では済まされるようなものではありません。
また、穴のサイズが合わない穴石によるアンクルのガタも、報告によれば「見て解るほど顕著だった」
そうです。
しかし、何の処置も報告もなく「修理完了」とされた以上、これらは見落としたと判断せざるを得ま
せん。
2) 使用に耐えない状態のものを「修理完了」としたこと。
部品がなければどうにもならないケースはあるでしょうから、割れた穴石が交換できないこと自体は
問題ではありません。しかし、穴石が割れた状態で「修理完了」とすることには問題があります。何
故なら、穴石が損傷した状態で使用すれば本来の性能が出ないばかりか、天真の損傷が進んでさらに
状態が悪化するからです。仮に他の部分が完璧であったとしても、この一点だけでも時計としての使
用に耐えるものではありません。
つまり、風防交換や洗浄以外の作業は全くの無駄ということになります。交換する部品がなく、完全
には修理できないと判った時点で修理は中止すべきですし、少なくとも時計の使用はしないよう警告
があって然るべきです。何も知らずに今回の報告を信用して使い続け、致命的に損傷したら取り返し
が付きません。