10/03/21 18:56:54
というわけで、工房に持ち込んで再度調べて貰ったわけですが、単に穴石を交換すれば良いという話
ではなく、重大な問題がいくつも発見されたのです。その内容と、実際の修理を次に挙げていきます。
テンプ穴石割れ:
報告通り、確かに割れています。これは交換して貰いました。
天真の歪み:
天真のホゾが歪んでおり、動いているところを実体顕微鏡で見せてもらうと、偏芯した軸のブレが見
て取れます。ただ、穴石が交換できなければ新しい天真を作ってもすぐ破損しかねないので、そのた
めに手を付けられなかった可能性もあります。
ともあれ、穴石交換と併せて、天真の製作を依頼することにしました。まず、天真に取り付けられた
テン輪やローラーを取り外します。これらはカシメ付けられているため、力任せに外そうとすると部
品が歪んだり破損したりします。そのため、旋盤を使い、カシメ部分を削り落とす事で無理なく部品
を取り外せるようにします。
次に、焼きの入った鉄材から、旋盤で天真を削り出していきます。実体顕微鏡を使いながら、寸法は
現物合わせで確認しつつの作業。切削、研磨、仕上げの各工程を経て天真が完成します。完成後は
テンプとして組み立て、振れや片重りを取っていきます。
私のような素人からすれば、素材から精密な部品を削り出すというのは驚嘆すべき技術ですが、「天
真は車で言えばタイヤのようなもので、磨耗や破損は当たり前。それを交換するのも時計職人にとっ
ては当たり前でのことで、特別ではありません」とのこと。