10/02/06 22:41:09
>>413の続き
9月の初め頃のある日の夕方、もけおは何気なく市の中心部のショッピングセンターに
立ち寄る。何を買うわけでも無く店内をうろつき休憩所で
ベンチに座って一休みしていた。すると、一人の男に声を掛けられる。
「おお、もけお、久し振り。」
高校の同級生だった。自分から人に声を掛けるもけおではないが声を掛けられると気さくに
応じる性格だ。
「相変わらず地味なヤツやなあ。今は何をしとるん?」
「ウン、仕事決まらんのでなぁ、まあブラブラ…。」ともけお。
「そうやろ…俺も派遣で働いとったけど切られてもて、当面は役所で臨時職。まあ、5時には
終わって楽やけど給料はさっぱりじゃ。久し振りやしそこで寄ってこや。」
誘われるままにフードコートに向かった。
「晩飯前だしさっぱりとアイスでも喰うか?」
言われるままにフードコートのアイスクリームショップに向かう。
「俺はぁ…チョコミントにするか、コーンで。お前は…。」
「えーと…同じでいいや。」
アイスクリーム店のカウンター内では女子大生風のバイトの娘が2人。2人ともまじめそうな
雰囲気の娘だが、別の客に応対してる娘はスラッと高めの背。もけお達に対応していたのは
一見、中学生か、小学高学年かと見間違いそうな小柄な娘。
「…お待たせいたしましたぁ…。」
ニコッとアイスも溶けそうな八重歯が印象的な甘い笑顔で2人にアイスを渡す。
同級生はそのまま受け取りフードコートのテーブルに向かう。
「!」
もけおは一瞬固まって小柄な娘を見つめてしまう。
「あのぉ…。」
娘はちょっといぶかしんで頭一つ余り上のもけおの顔を見上げて微笑む。
「あ、…いや…あるがと。」
アイスをひったくるように急いで受け取るもけお。
”可愛いな”
普通この年代の元同級生同士なら「おい、今のアイス屋の子すげぇ可愛いな。」等と言う
くだけた会話が弾むところだが、もけおはチラチラとカウンターを見やりながら無言でアイス
を舐めるだけだった。
声を掛けて誘ったはいいが話しが弾まない。何となく気まずくアイスをそそくさと食べる同級生。
食べ終わると早々に席を立つ。
「じゃあな、もけお、はよ仕事みつかったらええのぉ。」
もけおもアイスを食べ終えると席を立つ。アイス屋のカウンターに目をやるとあの子が眩しい笑顔
で接客している。
何度もあの笑顔を心の中に思い浮かべながらもけおは駐車場に向かう。車を出し信号待ちをする
もけお。信号が変わると対向車線をじぇたたましい轟音を立て急発進してショッピングセンター方向に
向かう1台の車とすれ違う。セダンに妙なエアロパーツや騒音を撒き散らすマフラーを付けたVIPカート
称される車だ。わざわざ高級車を下品な姿にする意味がわからないもけおは軽く舌打ちしながら、だが
すぐにあの娘の笑顔を思い出しニヤけながら家に向かう。
続く