10/05/15 19:59:59 WQrrrjwg
長谷堂城を攻めていた直江兼続の軍が、関ヶ原での西軍の敗北を聞き撤退を開始。その時のことである。
上杉景勝家臣の小田部大学という者が直江兼続に向かい
「直江殿、私は伊達政宗の家臣、石川弥兵衛に言いたいことがあるので、少々陣を離れても宜しいでしょうか?」
これに兼続
「なんだか良く解らんが、何か考えがあるのだろう。まあ、良いだろう。」と許可した。
小田部は大いに喜び、門田と言う所までただ一騎駆け帰り、伊達軍の旗の見えるところまで来ると馬を止め、
大声で呼びかけた
「私は上杉景勝の郎党、小田部大学というものである!伊達殿のご家中である石川弥兵衛殿に対面したい事があって
ここに罷り来た!」
これを聞いて石川弥兵衛、これも一騎伊達軍の中から出てきた
「石川弥兵衛である!何事か!?」
「おお、石川殿か!私は今度の合戦での、お主の武勇の程に大いに感じ入った!
お互い知っての通り我らは撤退するが、次の合戦の時には是非相見えんと思い、ここに暇乞いに来た!」
石川、これを聞いて吹き出した
「あっはっはっは、上杉殿のご家中に武勇の士は多いと言っても、小田部殿の働きは特に目を驚かせていたので、
機会があればぜひ対面したと考えていたのだが、いやはや、はるばるここ迄、ただ一騎敵の中を帰ってくるとは、
まさしく日本無双の剛士である!」
「では、又会おう!」
「また、戦場で。」
そうして小田部は再び、上杉勢の元に戻って行ったと言う。
厳しい戦場における、勇者同士のエール交換であった。