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将軍秀忠が在京していた頃、江戸で辻斬りが頻発し、民は難儀していた。
そこで秀忠は酒井忠勝の提案に従い、板倉重昌を江戸に向かわせた。
江戸に到着した重昌は老中および旗本たちを集め、秀忠の上意を伝えた。
「おのおの方が残っておられるのは留守中の用心のためである。
ゆえにおのおの方が何故腰抜けになっているのか調査せよと私は命じられたのだ」
何を言っているのか皆目分からない、と老中たちが思っていると、
大久保彦左衛門が前に進み出てきた。
「将軍は何をお聞きになったのか。
なぜそのようなことを仰せになるのか、拙者にはさっぱり分からん」
「用心のために武勇ある方々を残したのに、辻斬りが出て民は迷惑している。
しかも、辻斬りを捕らえたとか討ったという知らせもない。
これはおのおの方が辻斬りを恐れて引き篭もっておるからではないかな?
上様は辻斬りごときにこの体たらくでは、万が一にも城を狙う者が現れたら
どうするつもりか、と御心痛であられた…」
重昌の言葉を聞いた彦左衛門は
「なんと!そのようなことにも気づかなかったとは恐れ入りまする。
早速、今夜から若い連中に狼藉者を討ち取るよう徹底させましょうぞ。
今日までの不覚悟については、なにとぞ上様におとりなし下され。
みなの衆も覚悟はよろしいな!」と珍しくかしこまった。
その場にいた者はみな彦左の言う通りだと言って帰っていった。
それからはみなが夜回りを始めたので辻斬りもぱったりと絶え、民は安心して
外出できるようになったという。