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織田信雄に仕える若侍、二宮千太郎が褌一丁で主君の前にやって来た。当然、信雄は彼を叱った。
「明日にも戦になろうという時に、お前は何をフザけておるんじゃ!!」
「ううっ…仲間内のバクチで、身ぐるみ剥がされてしまいました…明日に備え、せめて馬・具足は返してくれと
さんざん詫びても許してもらえず、刺し違えて死のうと思いましたが、殿の御役に立つ者を戦の前に殺しては
不忠になります。かくなる上は、この恥さらしに切腹をお許し下されっ…!!」
「…言い訳に一分の理がないわけでもないか。」
そう考えた信雄は、千太郎に馬・具足と金二枚を与え、下がらせた。千太郎もこれに応え、翌日の戦では
組打ちまでして兜首を取り、信雄も彼を賞したという。
慶長5年9月15日正午過ぎ、関ヶ原。松尾山に陣取った小早川秀秋は、不審な鉄砲の音を聞き、使い番を呼んだ。
「今の鉄砲、当方に向けてのものとみた。何処が、何用あっての射撃か、急ぎ確かめて参れ!!」
「承って候。」
さっそく使い番が麓に向かうと、麓からも騎馬武者が登って来て、使い番に話しかけた。
「貴殿は、今の鉄砲についてのお使いであろう。わしは、その事についてお教えするために来た。
あれは朝からの霧で火薬が湿ったため、我らが空砲を撃ったのじゃ。安心されよと、殿に伝えてくれ。」
「いや、拙者は「麓を見て来い」と殿に言われた。伝えたければ、他の者に言ってくれ。
頂上まで行くのが面倒なら、すぐ上にご家老の平岡様(頼勝・東軍派)がおられる。ご家老に申せば良かろう。」
そっけなく騎馬武者と別れた使い番が麓で様子を見聞きすると、騎馬武者の伝言と全く違った事実が浮かび、
急いで戻った使い番は、見聞きした内容を秀秋に伝えた。
秀秋はただちに動き、関ヶ原の戦況は一変した。
大役を果たした使い番の名は、二宮与三右衛門。信雄改易後、小早川家に仕えた千太郎の、成長した姿だった。
バクチにうつつを抜かしていた若者は、信雄によって運命を変えられ、断固たる意思によって歴史を変えた。