09/04/08 16:11:23 L5T5BOuu
>>495
それで思い出したけど、やっぱその周辺で「朱柄の槍を持っていいのは一日の戦で
七つの首をあげた勇者のみ」という風習があったらしい。
朝鮮でのこと、ある日黒田家の家臣、井口兵助という男が手柄をあげた。
なんでも切り通しの狭い道の広くなる辺りに横穴を掘って、そこに明兵が弓矢を構えて
陣取ってたらしい。で、穴の近くを通った奴を問答無用で射殺。
これが効果的で、横穴の前には死体の山が築かれたそうな。
日本軍の諸勢が通るべき道を通れず難儀していたところ、兵助とその家来一人がこの
穴の中に突っ込んだ。
二人の奮戦が契機になって横穴は制圧され、日本軍はこの道を通ることができた。
この井口兵助、強情っぱりで頑固者、放言も多くて敵の多い男だったらしい。
その兵助が黒田長政に訴えた。
「俺の今日の大手柄、朱柄の槍を持つにふさわしい活躍でしたよね!
加増はいらないので、是非とも朱柄をお許し下さい」
その時兵助主従が取った首はあわせて五つだが、特別の働きを自負してたのと、まあ、
よっぽど欲しかったんだろうね朱柄の槍w
だがそこは黒田長政、父親から「博打が足りねえよお前の生き方はよ!」と言われてしまう
常識人。老職たちにも意見を聞いたところ、「やはり数も足りてないのに朱柄を許すのは
どうかと」との返事。
それを聞いても兵助は諦めず、「お許し頂けないならお暇を頂きます!」とだだをこねた。
むっとしたか黒田長政は「だったら暇をくれてやると言え」と言ってしまう。
こうなると強情者、兵助は即刻黒田の陣所を立ち退いて、立花宗茂の陣所に向かった。
手土産に道すがら撃ち落とした鶴を携え事情を話すと、宗茂は親切に迎えてくれた。
…ここで、「立花様は小身なので後までの主君と頼るつもりはありません。しばらくここに
置いて下さいね^^」と言ってしまう辺り実になんというか…何?
これを聞いて立花宗茂がこいつは…と思ったかどうかは定かではない。
とにかく宗茂の方から長政へ連絡が入った。
「黒田殿が本当に彼をクビにしたんだったら私の所に来てもらおうと思うけど、どう?」
「暇なんかやってない。あいつが無理なこと言って飛び出しただけ」
「そうか、でもこのままじゃ帰参しそうにないし、こちらで説得して帰らせるよ」
こうして立花宗茂、井口兵助をこんこんと諭した。
「朱柄の槍は首七つと決まっているのに、他の武功があるからと強いて朱柄を欲しがるのは
却って弱そうに聞こえる。その方は今後絶対に首を七つ取ることはできないのかな?」
武士心をおさえたこの理論に井口兵助は納得。宗茂に付き添われて黒田家に帰参した。
宗茂は長政に「じゃあ今度実際に一日に首七つ取ったら、必ず朱柄の槍を許してやりなよ」と
口添えして自分の陣所まで戻って行ったという……どんだけいい人なの?立花宗茂。
その後ほどなくして、井口兵助は見事一日に七つの首をあげ、朱柄の槍を許されたという。
…実は、この井口兵助という男、黒田長政の三つ上、幼児の頃から黒田家に出仕し、
長政が織田家に人質に出される際には近侍として付き従ったほどの仲で、他の家臣から
「子供の頃馬になって遊んでもらったからって贔屓してる」などと言われてしまうくらいの
気に入りの家臣だった。
売り言葉に買い言葉で出て行かれたのを後悔していたのだろうか。
主従喧嘩は犬も食わない悪い話…。
これ、ずっと前に立花宗茂のいい話としていい話スレに書き込もうと思ったことあったけど、
まとめてる内に宗茂はひたすら迷惑かけられてるだけじゃないかと思えてきてやめたんだ。