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大ぬる山
天正元年(1573)8月、刀根山に陣取った朝倉軍と、その麓の織田軍との対峙は続いていた。
ある日、信長は井楼に上がり
「敵は今夜引く。先陣の者たちは油断するな!」と使いをたびたび出して下地させた。
が、これを聞いた先陣の者達は
「殿は何を言っているんだ?敵は大軍、しかも地の利を得て、あまつさえこれは主力決戦だぞ。
こっちならともかく、敵が引くわけが無い。」皆そう言って、あまり気にしなかった。
信長は夜になっても井楼から降りず、敵陣をにらみ目も離さなかった。
丑の刻、信長の声が響いた、「敵は退くぞ!」
法螺貝を吹きたてさせると馬に乗り、「先陣の大ぬる山どもは油断して出遅れておるぞ!
旗本の者ども功名せよ!」と、真一文字に駆け出した。
はたして先陣の軍勢は遅れ、この戦、信長の旗本にて勝利を得た。
信長は味方でも怠っているものには、「大ぬる山」と呼んで笑っていたのだそうだ。
信長の、口の悪いお話。