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男性ホルモンは人間不信を強化:研究結果
2010年6月 3日
男性ホルモンのテストステロンは、人の攻撃性や競争、社会的地位と関係があることがわかっている。
さらに、人が他者に対して持つ素朴な信頼を減じる働きもある、という研究成果がこのたび発表された。
「テストステロンは、信頼を減じ、警戒心を抱かせて用心深くさせる」とオランダの
ユトレヒト大学の心理学者Jack van Honk氏は述べている。
van Honk氏は、5月24日付けで論文が『米国科学アカデミー紀要』(PNAS)に発表された
研究を指揮した。
研究では、数十人の女性が舌下に0.5ミリグラムのテストステロンを投与された。
ホルモン濃度が10倍に上昇する量だ[女性の男性ホルモン分泌量は、男性の20分の1とされる]。
その後、被験者の女性たちは、複数の顔写真を見て、どの程度信用できるように見えるかを評価した。
実験の結果、テストステロンの働きによって、評価は投与前の約半分に低下した。
ただしその影響が強かったのは、ふだんから騙されやすい女性だけだった。
van Honk氏は、用心深い女性でこうした影響が見られない理由について、
あまり強迫的になると社会に適応できなくなるからではないか、と推測している。
「テストステロンは、社会不安障害(SAD)などの精神疾患の治療に応用できる可能性があり、
社会的行動に良い影響を及ぼす面があるという見方が生まれると思う」とvan Honk氏は述べている。
過去に行なわれた研究から、オキシトシンというホルモンが、他者への信頼を高め、
絆の形成に関係するといわれている。テストステロンとオキシトシンという2つのホルモンの
バランスによって、信頼感が最適なレベルに保たれている可能性がある、とvan Honk氏は説明する。
今後の研究で、脳のどの回路がこれらのホルモンを通じて信頼感を調整しているのかを判断したいと
同氏は考えている。
[オキシトシンは、末梢組織では主に平滑筋の収縮に関与し、分娩時の子宮収縮や乳腺の
筋線維を収縮させて乳汁分泌を促すなどの働きを持ち、子宮収縮薬や陣痛促進剤として
使用されている。また、マウスにおいては性行動を調節する神経伝達物質としても注目
されているが、人間では、オキシトシンが社会行動・性行動・匂い記憶・交友関係確立・信頼関係確立
に有効であるという証拠は見出されていないともされる]
今回の研究には参加していない、コロンビア大学の心理学者Pranjal Mehta氏は、
今後の研究で、より激しい競争的状況下において、テストステロンの働きによって
信頼が低下するかを検証すべきだ、と指摘している。
「現実社会的な文脈でテストステロンの効果を調べることが重要だ」とMehta氏は語る。
[日本語版:ガリレオ-矢倉美登里/合原弘子]
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