10/05/26 00:17:21
スティーブン・ピンカーさんは言語研究で知られるハーバード大の認知心理学者である。
昨年、この長髪のインテリ科学者がニューヨーク・タイムズに書いたエッセーが話題を呼んだ。
タイトルは「私のゲノム、私自身」。自分のゲノムを大学や検査会社に解読してもらい、結果を考察した。
「ブロッコリーを苦いと感じる遺伝子を持つが、いつも食べている」「アルツハイマー病のリスクを高める遺
伝子型は見ないことにした」。ネットで記事を見ると、変わったコメントが飛び込んでくる。
「ヒトゲノムの概要版」が公表されて、この6月で10年になる。当時は、米欧日などの「国際ヒトゲノム計画」
と、ベンチャー企業が解読にしのぎを削っていた。政治的「手打ち」として、両者の代表を呼び、米ホワイト
ハウスと英首相官邸を結んで行われた記者会見は、今も語りぐさだ。
それから10年。ゲノム研究はどう進んできたのだろう。
第一に驚くのは、解析技術の急速な進歩である。ヒトゲノム計画では1人分のゲノムを解読するのに13年
を費やした。それが今では、基本データだけなら1カ月といわれる。
さらに目を見張るのは低コスト化である。米国の解読チームを率いていたコリンズ博士によると、解読の
費用はこの10年で1万4000分の1に下がった。今年の初めには、1人のゲノムを6000ドル以下で読める
という次世代装置も発表されている。
この「高速化」と「低コスト化」が可能にしたのが、個人のゲノムを解読する「パーソナルゲノム」である。
全ゲノムを丸ごと解析する人も増えた。ネイチャー誌によると公表されているだけで20人以上、非公表も
含めるとさらに多い。
公表組にはDNAの二重らせん構造を発見したワトソン博士や、南アフリカの平和運動家ツツ元大主教、
ハリウッドスターのグレン・クローズさんも名を連ねる。4月末には「全ゲノム解読者」の会合が開かれたと聞くと、
「プライバシーはどうなってるの」と問う自分が、時代遅れのような気がしてくる。
とはいえ、ゲノムを読めばすべてがわかるという話ではない。この10年でわかったのは、「思った以上に人間も
生命も複雑だった」ということだ。
>>2 に続く
▽ ソース 毎日jp
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