10/05/21 19:58:14
このほど、16キロメートルもの自由空間距離を隔てて、光子(フォトン)の間で情報を
テレポーテーションさせる実験が成功した。
この距離は、過去の記録を塗り替えるものだ。この偉業を達成した研究チームは、
これによって、従来の信号に頼らない情報のやり取りの実現に一歩近づいたと書い
ている。今回達成した16キロメートルという距離を、地表と宇宙空間の間隔まで広げ
ることもできるだろうとチームは指摘する。[高度16kmは成層圏相当]
以前の記事(英文記事)にも書いた通り、「量子テレポーテーション」というのは、一般の
人がテレポーテーションと聞いて想像するのとはかなり違った働きを指す。量子テレポ
ーテーションでは、何かを別の場所に移すというのではなく、量子もつれの関係にある
2つの粒子(光子やイオンなど)を利用する。量子もつれの関係では、互いが互いの状態
に依存しており、相手の状態の影響を受ける。
この粒子の一方を遠くに送っても、量子もつれの関係のために、一方の状態を変えれ
ば他方にも同じ変化が引き起こされることになり、量子の情報がテレポーテーションさ
れたことになる。物質そのものがテレポーテーションされるというわけではない。しかし
これまでの実験は、粒子同士の間隔はメートル単位までに限られていた。
過去に数百メートルの距離のテレポーテーションが成功した唯一の例は、光子をファイ
バーチャネルを介して移動させ、その状態が保たれるようにした場合だ。今回の実験で
は、2つの光子を最大限にもつれた状態にさせた上で、うち一方に多くのエネルギーを与
えて、長さ16キロメートルの自由空間チャネルに送り出した。実験では、この前例のない
距離を隔ててもなお、遠くに行った光子を、残された光子の状態の変化に反応させること
が可能だった。
しかし、光子の長距離テレポーテーションは、この手法の応用開発に向かう上では小さな
一歩にすぎない。光子は情報の伝達には適しているが、操作の容易さではイオンのほうが
優れており、暗号化のためにはこの分野の進歩が必要になる。
また今回の研究チームによる長距離テレポーテーションの成功精度は89%だ。これは情報
の伝達には十分だが、人体を丸ごとテレポーテーションさせるという、われわれ全員の期待
に対しては、まだ危険な数字と言わざるを得ない。
[論文は『Nature Photonics』5月16日付け。研究者らは中国科学技術大学所属。
▽ ソース wiredvision
URLリンク(wiredvision.jp)
依頼を受けて立てました。