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(>>1)の続き
アンドロメダ座大銀河は銀河系からもっとも近い渦巻銀河で、距離は約250万光年です。
そのため見掛けの広がりがとても大きく、視野が広いすばる望遠鏡の主焦点カメラを
用いても、ハロー全体を測光観測するには膨大な時間を要します。そこで研究チームでは、
恒星分布を解析しやすい場所のいくつかを観測し、これまで観測されていなかった領域に、
明らかに恒星の空間密度が高い2つの構造(ストリームE、F)を発見しました。
また、後に他の共同研究者の観測結果と組み合わせた結果、別の観測領域にもストリームSWという
比較的薄い構造が存在することを明らかにしました。
さらに、本チームの共同研究者であるP. Guhathakurta教授(カリフォルニア大学サンタクルツ校)を
代表とするチームは、ケック望遠鏡の多天体分光装置を用いて、すばる望遠鏡で発見したストリーム構造を
構成する個々の恒星の分光観測を行いました。分光観測から得られたスペクトルからは、
ドップラー効果による恒星の視線速度が分かります。これにより、アンドロメダ座大銀河の
ハロー内にある一般星の運動や、その手前に重なって見える銀河系内の恒星の運動を区別
して解析することができます。
その結果、ストリーム構造が見えた領域では、確かに恒星が集団で同じような運動をしている
ことがわかりました。これは、まさに矮小銀河が潮汐力で破壊されて引き延ばされたときに
期待される空間運動です。すなわち、標準的な銀河形成論で予測される、矮小銀河の合体過程による
大質量銀河の形成のシナリオを裏付ける証拠を得たことになります。
田中幹人研究員は、「ハローのもっと広い領域の観測をさらに進めることによって、
大きな銀河の形成にどのような質量の矮小銀河が、それぞれどのぐらいの割合でかかわって
いたのかといった、銀河形成過程において重要な問題を解明することが目標になります」
と話しています。
この研究成果のうち、すばる望遠鏡の主焦点カメラによる恒星ストリームの発見は、
2010年1月7日発行の米国の天体物理学専門誌「アストロフィジカル・ジャーナル」708号に
掲載されました。
一方、ケック望遠鏡による分光観測の結果は、2010年1月7日に米国の首都ワシントンで
行われた第215回アメリカ天文学会で記者会見講演に選ばれ、報告されました。
注:田中幹人(東北大学/東京大学)、千葉柾司(東北大学)、小宮山裕(国立天文台)、
家正則(国立天文台)、Puragra Guhathakurta(カリフォルニア大学サンタクルツ校)、
Jason S. Kalirai(NASA宇宙望遠鏡科学研究所)、その他、カリフォルニア大学アーヴィン校、
ヴァージニア大学、マサチューセッツ大学、エール大学、ワシントン大学、コロンビア大学、
カリフォルニア工科大学の研究者からなるチーム
(引用ここまで)