10/01/30 16:44:47
核融合発電の実現が一歩近づいたと科学者が発表した。
研究を支えたのは史上最強のレーザーシステムである。
核融合反応は太陽などの恒星でも起こっており、地球上でも効率的かつ
カーボンフリーなエネルギー源として期待されている。しかも、現在の原子炉のように
核分裂がもたらす超長期かつ高レベルの放射性廃棄物が生じることもない。
研究を率いたアメリカ、カリフォルニア州にあるローレンス・リバモア国立研究所(LLNL)の
物理学者ジーグフリード・グレンザー氏によれば、「10年以内に核融合発電所の
プロトタイプを稼働できるかもしれない」という。
研究チームは今回、約5ミリの燃料ペレットを数千万度まで加熱するため、
LLNLが誇る世界最大のレーザー核融合施設「国立点火施設(NIF)」を利用した。
「レーザーパルスを燃料ペレットに照射することにより、100億分の1秒という極めて
短時間でアメリカ全土の電力消費をまかなえるエネルギーを生産できる」と
グレンザー氏は解説する。
今回のテストでは、慣性核融合という技術で核融合を点火できると確認された。
核融合とは水素などの2つの原子核が融合する現象のことで、途方もない
過剰エネルギーを生み出す力を秘めている。一方、核分裂とは文字通り原子が
2つに分裂する現象のことだ。
兵器として利用するのではなく、エネルギー生産に核融合を使うのなら点火を
完全に制御する必要があるが、過去に成功した試しはない。しかし今回の
デモンストレーションの成功により、実現へ向けて大きく前進したと言えるだろう。
研究所で核融合を起こすには膨大なパワーのレーザー出力が必要になるが、
制御された核融合が成功すればその10倍から100倍もの電力を生産できるはずである。
何十億年も輝き続ける夜空の星がなによりの証拠だ。
しかもパワフルなだけでなく、クリーンかつエコでもあるという。
「長期にわたって悪影響を及ぼす核廃棄物が生じないのも強みだ。それどころか、
放射能の汚染値を化学的に下げる効果も期待されており、実際に核廃棄物問題の
解決策として核融合の利用を提唱する科学者もいる」とグレンザー氏は説明する。
核融合で発生する中性子には放射性原子の配列を組み替え、放射能を除去する力が
あるらしい。
>>2へつづく
ソース:ナショナルジオグラフィックニュース
URLリンク(www.nationalgeographic.co.jp)
カリフォルニア州、ローレンス・リバモア国立研究所にある世界最大の
レーザー核融合施設「国立点火施設(NIF)」のターゲット室。
右側から伸びるターゲット配置装置の先端には、核融合実験で使用される小指の先ほどの
シリンダーが保持されている。
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