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【新年企画・第3回】太陽光・宇宙帆船、今年金星へ
研究者約240人が宇宙の研究や、惑星探査機開発などに当たる宇宙航空研究開発機構
(JAXA、本社・東京都調布市)の研究施設が、相模原市由野台にある。
ここで今、太陽光を推進力にして宇宙空間を進む「ソーラーセール」に、太陽光発電の能力を加えた
日本独自の技術「ソーラー電力セール」を実証する宇宙帆船「イカロス」の開発が大詰めを迎えている。
2010年度前半、H2Aロケットで鹿児島県の種子島宇宙センターから打ち上げられ、金星に接近する。
「イカロスは太陽光を利用して進むだけでなく、非常に薄い太陽電池で発電も行う実験。
将来的には、高速飛行を可能にし、国内で初めての木星圏探査が現実になる」と、同機構名誉教授の
的川泰宣(やすのり)さん(67)(システム工学)は解説、「宇宙にガソリンスタンドはないから」と笑った。
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イカロスは、通信機やバッテリーなどを組み込んだ円柱形の本体(高さ1メートル、直径1・6メートル、重さ約300キロ)と、
極薄の太陽電池が付いた約14メートル四方の薄い樹脂膜の“帆(セール)”からなる。
ロケット内で帆は、イカロス本体に巻き付いているが、宇宙で分離されると開き、太陽光を受ける。
「皆の想(おも)い 花開け」。研究開発チームのリーダーで約10年、主に帆を開く開発を担当した
同機構助教の森治さん(36)は昨年9月、メールマガジンにこうつづった。
帆の厚さはわずか0・0075ミリ。傷めずに広げるのは至難の業で、折り紙や帆と同じ素材を折り畳み、
開く想定実験を繰り返し、真夜中のスケートリンクを借りて、実物大模型を回転させて実験したこともある。
最終確認を経て、4月に種子島に運ぶが、「最後まで全力で頑張りたい」。森さんの緊張は高まっている。
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「ついに実現の時が来た」。「宇宙戦艦ヤマト」「銀河鉄道999」などで知られる漫画家松本零士さん(71)は、
打ち上げ間近のイカロスに感慨深そう。作品で「宇宙帆船」を何度も登場させてきたからだ。
「地上で資源を奪い合い、環境を破壊するなんて愚かなこと。宇宙なら、太陽光を24時間、365日浴びられる。
イカロスは、全生命の存亡をかけた太陽系の大航海時代の始まりを告げる試み。ぜひ成功させてほしい」とエールを送る。
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イカロスが成功すれば、同機構は10倍の帆を持つソーラー電力セール探査機を開発し、
2015年以降に木星周辺の探査を目指す。イカロスはわずか数百ワットの発電能力しかないが、
将来は帆だけで10キロ・ワット程度を発電、強力な推進力を持つイオンエンジンを動かす構想だ。
イオンエンジンは、キセノンガスなどからプラスイオンを発生させ、強力なマイナス電極で吸い寄せて
高速で噴射する仕組みで、宇宙でのクリーンエネルギー時代は目前に迫っている。
「惑星探査機にはこれまで、重い燃料を積まなければならなかったが、軽くなった分、観測機器をたくさん積めるし、
帰りの燃料の心配もなくなる。太陽光が届く宇宙空間なら、どこまでも行け、帰って来られるようになる」と的川さんは語った。(小林直貴)
ソーラーセール 帆(セール)で受けた太陽光(ソーラー)の中から、光子と呼ばれる粒が発する
わずかなエネルギーを推進力に変換する仕組み。宇宙空間には大気の抵抗がないため、
大きな推進力となる。アイデアは100年以上前からあったが、軽くて丈夫な素材の開発で、
急速に現実味を帯びてきた。米国の民間研究団体が01年、05年に打ち上げを行ったが失敗。
まだ、宇宙での航行が成功した例はない。 (2010年1月6日 読売新聞)
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