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腸管免疫応答に重要な細菌認識受容体を世界に先駆けて発見
-効果的な感染症・アレルギーに対する経口ワクチンの開発に期待-
平成21年11月12日
独立行政法人 理化学研究所
◇ポイント◇
* 腸管上皮細胞のM細胞で特異的に発現する「GP2」が、細菌受容体として機能発揮
* GP2による細菌の取り込みが、迅速に腸管免疫応答を誘導
* 粘膜免疫の主役「IgA」産生を誘導する経口投与の粘膜ワクチン誕生に道
独立行政法人理化学研究所(野依良治理事長)は、特殊な腸管上皮細胞として知られるM細胞で特異的に
発現するGP2というタンパク質が、細菌などの抗原を積極的に取り込み、腸管免疫応答の誘導に重要な
役割を果たす細菌受容体であることを世界に先駆けて明らかにしました。免疫・アレルギー科学総合研究
センター(谷口克センター長)免疫系構築研究チームの大野博司チームリーダー、長谷耕二研究員や横浜
市立大学大学院生命ナノシステム科学研究科免疫生物学研究室を中心とする共同研究グループによる
研究成果です。
腸管内には、私たちの身体を構成するすべての細胞の数よりも、はるかに多い膨大な数の細菌が常在菌
としてすみ着いています。さらに食事の際には、食べ物とともに病原性の微生物を含む種々の微生物が侵入
してきます。そこで、体は、腸管免疫系と呼ばれる免疫系を発達させ、生体防御機能を高めてきました。
腸管免疫系は、どのような微生物が腸管の中で活動しているかを常に監視し、必要に応じてこれらに対して
適切に応答することで、病原体を排除したり腸内細菌バランスを維持したりしています。このシステムは
「腸管の免疫監視」と呼ばれています。腸管免疫を担うリンパ組織(腸管関連リンパ組織)を覆う上皮細胞層には、
M細胞と呼ばれる特殊な細胞が存在しています。このM細胞を介して腸管内の微生物の一部が免疫組織に
取り込まれ、腸管免疫応答が誘導されると考えられていますが、その詳しいメカニズムについては長い間不明でした。
研究グループは、M細胞の表面にGP2というタンパク質が特異的に存在し、このGP2が腸内の常在菌である
大腸菌や、病原菌であるサルモネラ菌を捕捉して、腸管の免疫組織に受け渡すことを明らかにしました。
GP2の欠損したマウスでは、これらの細菌に対する適切な免疫応答が起こらないため、GP2は腸管の免疫監視に
重要な分子であることが分かりました。さらに、このようなGP2の性質を制御することで、これまでほとんど成功
していない、種々の病原性細菌やウイルス、さらにはアレルギー症状の軽減に効果的な、注射によらない
「経口ワクチン」の開発が期待できます。
本研究成果は、科学雑誌『Nature』(11月12日号)に掲載されます。
理化学研究所プレスリリース
URLリンク(www.riken.go.jp)
Uptake through glycoprotein 2 of FimH+ bacteria by M cells initiates mucosal immune response
Nature 462, 226-230 (12 November 2009) | doi:10.1038/nature08529
URLリンク(www.nature.com)