09/08/06 22:15:37
平成21年8月5日
科学技術振興機構(JST)
Tel:引用元参照(広報ポータル部)
東北大学
Tel:引用元参照広報課)
レーザー光照射で有機絶縁体を金属に変化させる新手法を開発
JST目的基礎研究事業の一環として、東北大学 大学院理学研究科の岩井 伸一郎 教授らは、
光によって有機絶縁体を金属や超伝導物質へ瞬時に変化させる新しい仕組みを発見しました。
従来、絶縁体を電気伝導性のある金属に変える方法として、原子置換による伝導キャリアの
注入法が知られていました。一方、この伝導キャリアの注入を原子置換ではなく光照射に
よって行うことで、絶縁体を金属へ瞬時に変えることもできます。しかし、そのためには
高強度の光照射が必要であり、レーザー照射による物質の温度上昇によって物質自体が
損傷するなどの問題がありました。
本研究グループは、2つの分子の対(二量体)を構造単位とする有機物質を用い、特定の
波長の光(近赤外光)を当てることによって、絶縁体-金属の制御を高強度の光照射を
用いずに効率よく行うことに成功しました。今回見いだされた方法では、有機物質を構成する
分子配列を変化させることによって、電子の動きやすさを決めている電子間のクーロン反発
エネルギー注1)を光で直接変化させています。この技術は、従来の光キャリア注入法とは
全く異なるものであり、今後、光誘起超伝導など新しい物理現象の開拓につながることが
期待されます。
本研究は、東北大学金属材料研究所の佐々木 孝彦 准教授らと共同で行われました。
本研究成果は、米国物理学会誌「Physical Review Letters」に受理され、
オンライン速報版で近日中に公開されます。
(中略)
<研究の内容>
東北大学 大学院理学研究科の岩井 伸一郎 教授と東北大学金属材料研究所の佐々木 孝彦 准教授らの
研究グループは、有機二次元モット絶縁体κ -(BEDT-TTF)2Cu[N(CN)2]Br(図2)を対象に、光誘起モット転移の
新しいメカニズムとして、光によるキャリア注入とは異なり、弱い光でも実現できる高効率な方法を見いだしました。
この方法の最も重要なポイントは、対象物質として分子の二量体格子注4)(図2b))を有する有機物質を用いたこと、
特定な波長の光(近赤外光)を選択することで二量体内部の分子配置を効率的に変え、サイト間を動き回る電子の
動きやすさを向上させたこと(図3)です。物質の電気的特性を決めている電子間のクーロン反発エネルギーを光で
制御したことが、この研究の特徴です。
本研究では、クーロン反発エネルギーの光制御による絶縁体-金属転移を、フェムト秒中赤外ポンプ-プローブ分光
(図4)注5)を観測することに成功しました。この光による相転移は、1光子/500分子程度の比較的弱い光で
起こすことができ、図5に模式的に示すように、光子あたり約100分子程度に広がります。
これは、従来のキャリア注入型の光モット転移で必要な光強度に比べ、1/50から1/100と桁違いに弱く、
光キャリア注入法の問題点である高強度光は必要ありません。
(引用ここまで。以下引用元をご覧ください)
▽記事引用元
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科学技術振興機構(URLリンク(www.jst.go.jp))