09/04/02 07:11:22
素手で触ると炎症を引き起こす生物「ウミケムシ」の持つ毒の正体を突き止め、
その毒物質を人工合成することに慶応大と名古屋大のチームが成功した。
二十七-三十日に千葉県船橋市で開かれた日本化学会で発表した。
新しい抗炎症剤の開発につながる可能性があるという。
ウミケムシは体長一〇センチ前後の多毛類。比較的暖かい海を好み、
日本では本州から沖縄の干潟などに生息する。
体の側面に「剛毛」と呼ばれるとげがあり、触れるとかゆみを伴う炎症が起こる。
炎症は数日続き、漁師や釣り人にとっては「嫌われ者」の海の生き物として知られる。
炎症は毒物質によって引き起こされているとみられていたが、これまで特定されていなかった。
チームは、沖縄県の泡瀬干潟でウミケムシの一種「ハナオレウミケムシ」を採集。
アルコールで抽出した水溶性成分中の化合物をマウスの足の裏に注射して
腫れ具合を観察するという手法を用いて、毒物質を探した。
その結果、炭素が鎖状につながった構造の神経伝達物質「ガンマアミノ酪酸」を分子内に持つ
有機化合物が毒物質と判明。ハナオレウミケムシの学名にちなんで「コンプラニン」と命名した。
コンプラニンは、炎症を起こす際に重要な役割を果たしている酵素「プロテインキナーゼC」を
活性化させていることが分かった。
毒性はマウスなどを死なせるほど強くなく、有毒植物のアセビの百分の一程度だった。
チームは、人工的に化学合成することにも成功。生物から抽出する必要がなくなり、
合成物質で実験できるようになることから、物質の性質の解明が一層進むと期待される。
慶応大の上村大輔教授は「炎症が起こる詳しい仕組みを今後さらに明らかにし、
新しいタイプの抗炎症剤に応用する道を探りたい」と話している。
ソース:東京新聞
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ウミケムシ(Wikipedia)
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