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大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構(KEK)物質構造科学
研究所の柳下明教授のグループは、国立大学法人京都大学八尾誠教授の
グループ、トリエステ大学P. Decleva教授のグループ、大学共同利用機関法人
自然科学研究機構分子科学研究所小杉信博教授らと共同で、KEK物質構造
科学研究所の放射光ビームラインBL-2Cを用いて、ファン・デル・ワールス力で
結びついたネオン2量体であるNe2分子に軟X線放射光を照射して電子を放出
させる光電離実験を行い、放出された光電子と、Ne2分子が解離して生成した
ネオンのイオン(Ne+およびNe2+)の同時観測によって、光電子を放出した
ネオン原子がNe2+イオンとして検出されることを突き止めた。
他方、放出された光電子と、解離したネオンのイオン(Ne+およびNe+)の同時
観測では、内殻電子がどちらのネオン原子から放出されたのか全く判別が
つかないことも明らかにした。
量子論によれば、等価な2つのネオン原子から電子が1個失われる場合、
どちらのネオン原子が電子を失い、どちらが失っていない状態であるかは観測を
行うまで定まらない。Ne2分子を構成する原子はいずれも、2つの状態(電子を
失った状態と失っていない状態)の重ね合わせの状態として存在している。
このような状態は"シュレーディンガーの猫状態"と呼ばれている。
電子がどちらのネオン原子から放出されたのかを特定することは可能なのか、
可能だとすれば、電子がどちらの原子から放出されたのかを特定するには
どのような観測を行えばよいのか。これらは量子力学の観測問題にかかわる
基本的かつ重要な疑問である。
本研究では、同時観測によって電子を放出した原子を特定することに世界で
初めて成功し、これらの疑問に解答をもたらすとともに、観測事実が観測手法に
よって全く違って現れるという量子論に特有な現象も露わにした。
今回の成果は、米国物理学会誌「フィジカル・レビュー・レターズ」オンライン版に
7月25日に掲載された。
(長文の為抜粋しました。詳細は以下のソースをご覧下さい)
ソース:URLリンク(www.kek.jp)
画像:URLリンク(www.kek.jp)
高エネルギー加速器研究機構プレスリリース 2008年8月5日
【参考】
■放射光科学研究施設(Photon Factory)
URLリンク(pfwww.kek.jp)
■JSTOR
The Present Situation in Quantum Mechanics: A Translation of Schrodinger's
"Cat Paradox" Paper
URLリンク(www.jstor.org)