09/08/15 12:38:46 886Qa8vs
きんしゃい亭は決して味だけが売りではない。魅力はそんなところにあるのではない。
では、どうしてどれほど惹かれるのか?
それは人間の味である。人の手触りや温もり。ばらつきや雑味である。
日によってはスープに膜が張ったり、丼の底にジャリジャリ感がある。
職人的な真面目さがあり、しかも押し付けない。
全方位で誰からも好かれるものではない。でも、そこが良い。
きんしゃい亭はどーんと一直線、「不器用ですから」の健さんのようである。
その姿はどこかシングルモルト・ウィスキーを彷彿とさせる。もともとウィスキーなんて
スコットランドの野卑な地酒だった。シングルモルトはその血をそのまま持って生きている。
円い味わいのブレンディッドとは別物だ。好かれる理由はその武骨な一本気にある。
きんしゃい亭はラーメンが本来持っていた庶民性、ジャンクフード性をちゃんと保持し続けている。
それは化調でありベトベトでもあり、安さでもある。大御所になったからって変にピュアにならないのがいい。
人も食べ物も雑味に美味しさがあるローリング・ストーンズだって、そうでしょ?
何軒かはしごして、きんしゃい亭を徐々に、しかし確実に好きになってしまった。
ヤバイ。ミイラ取りがミイラになってしまったではないか。
取材後、ヘルスメーターに載ると、体重1.2kg、体脂肪1.3%マシマシである。
文/吉村喜彦