09/01/27 12:54:37 uGl4D/Bt
立花隆著「臨死体験」下巻403p~
私自身どう考えるかというと、前にも述べたように、大部分は脳内現象で
説明可能だと思っている。別の言い方をすれば、現実体験説は、立証が不十分だと
思っている。なるほどこのケースでは、体験者が本当に見えるはずがないものを
みている、と万人を文句なしに納得させるケースはないということである。
では脳内現象説で全てを説明可能なのかというと、これまたそうとも言い切れない。
両説どちらも説明可能な境界領域のケースがかなりあるのである。
~中略
そこから、心臓手術をされたサリバンさんという人の話しにつながっていく。
しかしサリバンさんの場合は、それでは(脳内現象)では説明がつかないということは
前に述べた通りである。だいたいサリバンさんの目には保護シートがかぶされ、
それがテープでしっかり貼り付けられていたから、薄い意識があったとしても、目でなにか
を見るということはできないのである。また、視覚能力が残存していたとしても、
サリバンさんの記憶には、視覚能力では得られない内容があった。
特にアイススラッシュを詰め込まれた心臓がガラステーブルの上に置かれていたという話(二十三章)
は、重要である。これは一般的知識では知られない事実であるし、手術前にも、
手術後にも、サリバンさんには知ることのできなかった事実である。
そしてガラステーブルの上に心臓を置くなどとあり得ないと医者に否定されながら、
でも自分の目には、そう見えたと主張して譲らなかったという点も重要である。
こういう体験者は、通常あとで、客観的事実を知ると、それに合わせて、
自分の記憶内容を修正して合理化してしまいがちなのだが、(この場合は医者の主張に
合わせてしまう)サリバンさんはそうしようとはしなかったのである。
そして頑固に自分の記憶を主張しつづけたところ、ひょんなことから、それがかえって、事実に近い
ことがわかったのである。(その顛末は、二十三章で書いたとおりである)
こういう例は、前章で説明したとおり、刑事裁判で言う、犯人しか知りえない事実として、
高い証明力が与えられる。サリバンさんのケースを重要視するもう一つの理由は、
これは、私自身が直接に真偽を確かめたケースであるということである。