08/06/20 16:43:08
服の焦げる匂い。 ガラン、という鉄板の倒れる音
「…ツンちゃん、貴女ってコは……」
「……お兄ちゃん? …ううっ……お兄ちゃぁぁぁん!」
チェーンソーで分断された大型冷蔵庫の中から、氷の欠片と助手が転がり落ちていた。
すかさず冷え切った彼を抱しめるツン所長、その目から光るものが流れる。
「う、うう……所長……僕は…貴女を…信じ…てまし・た……」
「馬鹿! 何も喋らなくったっていいわよっ!」
「これ……、最後の…一個で…す」
凍てついた助手の掌には雪見大福が握られていた。
衰弱して死相の出た危険な顔に、無理な笑顔を浮かべて。
「推測できたけどアンタってホントに馬鹿っ! こんなの先に食べなさいよっ!」 グスン
「……全部…食べると……怒る…くせに」
「ええ、怒るわよっ!
今後も私の分を、ずっと用意しないと許さないんだからっ!」 グスングスン
「了解、……した………よ…」
梅雨雲が今にも泣き出しそうな朝に、一条の光が川原を照らし始めた。
低く厚い雲に小さな晴れ間が拡がる。
それは救援のヘリが到着するまでは、代わりに泣いてくれる女神がいるからかもしれない──
─了─