08/06/08 01:54:05
調理法である。
どこで生れたかとんと見当がつかぬ。何でも薄暗いじめじめした所でクンクン泣いていた事だけは記憶している。
吾輩はあるとき初めて人間というものを見た。
しかもあとで聞くとそれは妹という人間中で一番獰悪な種族であったそうだ。
この妹というのは時々我々を捕えて煮て食うという話である。
今まさに吾輩が置かれている状況がそれである。
ただし伝え聞くところによると、妹が動物を喰らうとき、すぐには殺さず、生け捕りにして繋いでおくのだという。
今まさにこの状況がそれである。
しかも、食物を与え、美味そうに肥え太らしてから然る後、棒きれで殴り殺すという話だ。
この状況がまさに……
泣けてきた。
ただし、殺して喰う数日前からは食物を与えず、宿便を出し、肉から臭みを抜くという。
つくづく妹とは悪知恵の働く生き物である。
つまりは、毎日の食事を与えられている限り、屠殺の憂き目に遭うことはなさそうだ。
吾輩は三度三度、これが最後の食事と思ってかっ喰らう。
朝晩の散歩も、これが見納めかと思うと景色もすばらしく見える。
嗚呼、なんと生の喜びに溢れた毎日であることか!
助手とかいう、妹より数段格の低い人間(奴隷階級か?)よりも、吾輩ははるかに充実した日々を送っているといえよう。
悪くは無い。
悪くは無いのだ。
逃がさぬよう、毎晩吾輩を抱きすくめて眠る用心深い妹のぬくもりさえ…
寝ている間に頭を齧られる恐怖はあるにしても…