10/01/20 18:19:33
かつて日本で活躍した「移動図書館車」が南アフリカ共和国で“第二の人生”を送っている。
既に33台が南アの大地を走り回り、子どもたちに8万冊以上の本を貸し出した。2014年までに100台を贈る
計画を進めるNPO法人「南アフリカ初等教育支援の会」の蓮沼忠理事長(67)は「読書は国の礎。南アの
子どもたちに読書の習慣を根付かせたい」と話している。
蓮沼さんが勤務先のソニーから南アの現地法人に出向したのは1998年。たまたま地方の小学校を訪れた際、
校舎の中が妙に広々としていることに気づいた。「そうか、本がないんだ」
南アはその4年前の94年、マンデラ政権が発足。それまでのアパルトヘイト(人種隔離政策)時代、
黒人はほとんど義務教育を受けられなかった。今でも、成人の半数以上は読み書きができないとされている。
新政権下では学校が次々と建設され、就学率は9割以上になっていたが、教える側に読書の習慣がないこと
から、本をそろえている学校はごくわずか。公立の小学3年の識字率は現在も36%にとどまる。
「何とか力になれないか」。新しい国づくりの機運に燃える南アにほれ込んだ蓮沼さんは、日本から古い
図書館車を南アに贈る活動に参加。2004年に定年退職した後も、妻と共に南アに残って「支援の会」を
設立し、寄贈を続けてきた。
日本図書館協会によると、日本の自治体が保有する移動図書館車は昨年4月現在で559台。98年には691台
あったが、ディーゼル規制による改造費を捻出(ねんしゅつ)できないなどの理由で廃車となるケースが
目立つ。ただ、修理すれば5年以上走れる車も多く、支援の会では、各自治体に呼びかけて廃車情報を
集めているという。
昨年11月には、さいたま市立岩槻図書館で使われていた「こだま号」など12台が南ア東部の港町・ダーバンに
到着。フリーステート州、西ケープ州など4州の教育庁に配備される。今後はまだ1台も図書館車のない
東ケープ州など5州に贈る予定だ。
図書館車の輸送や整備には1台あたり約60万円かかる上、車1台に2500~3000冊の児童書も必要だ。
英語のほか、アフリカーンス語、ズールー語など、公用語が11もあるだけに本を探すのもひと苦労だが、
いずれも企業や個人の寄付などでまかなってきた。
蓮沼さんは「現地では、ようやく“読み書きそろばん”が大事という考えが定着しつつある。日本の
図書館車が南アの国の礎となってくれれば」と話している。
読売新聞(20日14:40)
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