10/01/06 18:57:19
アイスランドのグリムソン大統領は5日、破綻した同国の銀行に資金を預けていた英国とオランダの
預金者を救済した両国政府に資金を返済する法案に対して拒否権を発動した。これにより、同国の
銀行に対する国際的な救済策だけでなく、同国の欧州連合(EU)加盟にも疑問が生じている。
グリムソン大統領は拒否権発動の理由として、多くの国民が同法案に反対していることを挙げた。
法案は議会で数カ月にわたる論争の末、12月下旬に可決された。
アイスランドの大統領は国家元首だが、行政執行権を行使することはほとんどない。大統領が拒否権を
発動したのは、同国が1944年にデンマークから独立して以来2回目となる。アイスランドの憲法に基づき、
今後15年間に約60億ドル(約5500億円)の資金と金利の返済を求める同法案は、国民投票にかけられる。
世論調査では、法案が承認される見込みはほとんどない。
しかし、英国とオランダに資金を返済しなければ、同国が国際通貨基金(IMF)や近隣の北欧諸国から
必要な支援資金を得ることが不可能になるか、もしくは遅れる可能性が大きい。IMFは同国に対し
21億ドルの金融支援を承認しているが、まだ全額が支払われていない。
英、蘭両国政府は厳しい姿勢を見せており、英財務省のスポークスマンは「アイスランドが義務を果たす
ことを期待している」と述べた。オランダの財務省スポークスマンは「非常に失望している。アイスランド
には資金を返済する義務がある」と語った。
2008年10月にアイスランドの金融システムが崩壊し始めて以降、アイスランド国民は、豊かな同国を
世界の問題国に陥れた責任は欲深い銀行経営者にあると受け止めている。そのため、銀行の失敗を穴埋め
するために一般市民が債務を負うことには強い抵抗がある。法案は、15年で英国に23億5000万ポンド
(約3470億円)、オランダに13億2000万ユーロ(約1730億円)を返済するというもので、返済額は人口
30万人のアイスランド国民一人当たりで約2万ドルに達する。
問題の発端は、08年10月にアイスランドのランズバンキ銀行が破綻したことだ。多くの英国とオランダの
国民は高金利にひかれて、それぞれの国で運営されていた同行のアイスセーブとい うネット部門を通じて
ランズバンキ銀行に預金していた。欧州の金融規則により、アイスランドは預金保険によって破綻銀行の
預金者を保護するはずだったが、同国の3大銀行がすべて破綻したため、預金保険制度が崩壊した。そこで
英国とオランダの政府が自国民を救済するために介入し、その後アイスランドに資金の返済を求めていた。
WSJ(6日13:09)
URLリンク(jp.wsj.com)
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