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スイス秘密口座に包囲網
金融サミットで顧客リスト開示議論へ
脱税を助長しているとの批判の高まりを受け、スイスや欧州の小国リヒテンシュタインなどが、
相次いで銀行の秘密保持原則を緩和し、協力姿勢に転じた。
脱税マネーの捕捉で税収を確保したい各国は一段と圧力を強めており、
来週のロンドンでの金融サミットでも議題になる見込みだ。「脱税包囲網」が急速に狭まってきた。
■風穴
スイス金融最大手のUBSは2月18日、米国人の脱税をほう助したとして、
7億8000万ドル(約760億円)の制裁金を支払い、
200~300人の米国人顧客のリストを開示することで米司法省と和解した。
銀行口座の厳格な守秘義務を売りに、世界の富裕層から資金を預かってきた
スイスの銀行の「厚い壁」に風穴が開いた瞬間だった。
それを見た欧州諸国はスイスなどへの圧力強化に一斉に動き出した。
顧客リストを開示させれば、自国の脱税マネーを捕捉できるチャンスが広がるからだ。
欧州連合(EU)内で顧客リスト開示などに非協力的な国に対して制裁を加えるべきだとの意見が
高まったことを受け、スイスやリヒテンシュタイン、香港は3月に入り、
税務情報の交換に関する国際基準を受け入れ、脱税に絡んで海外の税務当局から要請があれば、
顧客情報を提供する方針に転換することを表明した。
税率を低くして海外から資金を呼び寄せるタックスヘイブン(租税回避地)の中でも、
南欧の小国アンドラは銀行の厳格な守秘義務を撤廃することを発表。
英マン島は税務情報の交換協定を新たにドイツと結んだ。
ブラウン英首相はこう評した。「タックスヘイブンの終わりの始まりだ」
■巧妙
スイスのUBSやリヒテンシュタインのLGT銀行は、米国での脱税に積極的に関与していた。
「LGTから顧客への郵便物は、当局の注意を引かないようにリヒテンシュタインからは絶対出さず、
スイスやオーストリアから出していた」
08年7月、米上院公聴会で元行員が詳細を暴露した。
UBSも1万9000人の顧客から179億ドルの資産を預かったが米政府には申告せずに、
多額の利益を上げていたことが米上院の調査で分かった。
米国では年間1000億ドル(約9兆7000億円)の脱税マネーが海外に流れているとされる。
米司法省はUBSに対し、今回の顧客データに加え、5万人以上の情報開示を求めるなど圧力の手を緩めていない。
欧州各国も歩調を合わせており、金融サミットでは、非協力的な国に対抗手段をとることを確認する見通しだ。
脱税摘発に向けた国際協力が本格的に動き始めた。(ロンドン 是枝智)
◇
銀行法で開示制限
スイスやリヒテンシュタインの銀行は、国の銀行法で、許可なく外部に顧客情報を伝えることが厳しく禁じられている。
さらに、顧客の秘密を守るため、富裕層向け業務を手がける金融機関では、 口座の名義人は
ごく限られた人間にしか知らされず、顧客を番号によってのみ識別する「秘密口座」の存在が知られている。
スイスでも、明確な犯罪にかかわる事案では、例外的に海外当局からの要請に応じて情報提供することはあった。
しかし、脱税調査には非協力的とされていた。
(2009年3月26日 読売新聞)
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