09/02/12 01:23:36
【パリ10日高木昭彦】フランス政府は9日、経営が悪化した自国の自動車業界に対する
総額78億ユーロ(約9300億円)の追加支援策を発表した。支援策は国内の工場維持を
条件としており、欧州連合(EU)内で保護主義への傾斜を懸念する声が広がった。
経済危機の中で、失業を恐れる国民の圧力に押されて保護主義が台頭すれば、
EUの経済政策の基盤となっている「単一市場の共通ルール」が揺らぐことになる。
フランスの支援策は、国内の工場を閉鎖しないことの見返りにプジョー・シトロエン・
グループとルノーに対し、それぞれ30億ユーロを低利融資するのが柱。自動車工場
の操業休止が続いているため、先のゼネストに労働者が参加して政府に雇用維持
を要求。追加支援策はこうした動きに対するひとつの解答だった。
しかし、EU議長国チェコのトポラーネク首相は、「フランスで売る車をチェコの工場で
製造するのは認められない」と語ったサルコジ・フランス大統領を保護主義論者と非難。
「保護主義を導入するのは経済浮揚を遅れさせ、消費者や投資家の信頼を損なう」
との声明を発表した。オランダやドイツも「フランスの動きに強い注意を払っている」
と即座に反応し、警戒感を隠さない。
一方、英国で今月上旬まで続いたエネルギー部門労働者のストは、同国東部の製油所
の拡張事業工事にポルトガルとイタリアの労働者400人が採用されたことに対する反発
がきっかけ。ストは外国人労働者排斥を訴える動きとなり、全国20カ所に飛び火した。
英国はEUの中でも移民に積極的に労働市場を開放してきたが、失業者の増加とともに
「仕事を奪われた」との不満が国民の中で膨らんでいた。ストは新規雇用の半数を
英国人労働者に割り当てる妥協案で収束したが、イタリアやポルトガルは「排外的で
国粋主義的な動き」と強く批判した。
こうした動きを踏まえ、EU欧州委員会のバローゾ委員長は9日の記者会見で
「経済危機に直面した加盟国は共通の手法を維持し、保護主義の誘惑に抵抗
することが極めて重要だ」と呼び掛けた。EUは加盟国間に摩擦も生じているため、
緊急首脳会議を月内に開き、連携強化を図る構えだ。
=2009/02/11付 西日本新聞朝刊=
ソース:西日本新聞 2009年2月11日 00:13
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