09/01/19 08:30:36
見えぬ敵タリバン、アフガン緊張の行軍…国際部隊に同行
【タリンコート(アフガニスタン南部)=尾関航也】
アフガニスタンで旧支配勢力タリバンが勢力を回復し、国際治安支援部隊(ISAF)が苦戦を強いられている。
タリバン政権崩壊から7年。現地ではなお危険と隣り合わせの任務が続く。オバマ次期米政権は、アフガンを「テロ
との戦い」の主戦場と位置づけており、日本の貢献が一層求められるのは確実だ。
オランダ軍を中心に各国部隊が駐留する南部ウルズガン州のISAF前線基地「キャンプ・ホランド」。今月9日の日没
直前、爆発音に続いて甲高い警報が鳴り響いた。ロケット弾が撃ち込まれたのだ。「何が起きたんだ」。食堂で早めの
夕食をとっていたオランダ兵らが、いすをけ散らす勢いで飛び出していった。
【写真】
タリンコートの市街パトロールで、小休止の間も周囲を警戒するオランダ兵=尾関航也撮影
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【地図】
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基地が直接攻撃を受けたのは2年半ぶりだ。着弾は3発。タリバンが大量保有する107ミリ弾だった。約4キロ北西の
山間部から発射されたとみられる。
人的被害は免れたが、敵が基地を射程に収める位置まで進出してきた事実は、駐留部隊を震撼(しんかん)させた。そ
の夜、反撃に飛び立った攻撃ヘリコプターのローター音が、灯火管制下の暗闇に絶え間なく響き続けた。
駐留部隊への攻撃は増加傾向にある。国連安全保安局の統計によると、治安関連の事件は、2007年にアフガン全体
で月平均573件だったのに対し、昨年は740件に上った。
13日、ウルズガン州都タリンコートで、ISAFとアフガン国軍の合同パトロールに同行した。総勢400人が隊列を組み、
自爆テロが起きたこともある市街地を徒歩で13キロ行軍する。
「黒チョッキに爆弾を仕込んだ男が数日前から街に潜伏している」。そんな情報が前日、ISAFに寄せられていた。兵士
たちの顔に緊張がみなぎる。
街はイスラム文化と部族の風習が色濃い伝統社会。未舗装の幹線道を進むと、全身をすっぽり布で覆った女性が、足
早に路地へと消えた。道の両側では、伝統衣装姿の男たちが無言で隊列を見つめる。敵は戦闘服を着ているわけでは
ない。タリバン兵が交じっていても判別するすべはない。
列の後方では、フランス外国人部隊の精鋭2人が「見えない敵」に目を光らせていた。過去にもアフリカ各地でゲリラと戦
ったというマテュ大尉(30)は「敵にはこちらが見える。圧倒的に不利だ」と言って、眉間(みけん)にしわを寄せた。
最大の脅威は、近年、タリバンの“主力兵器”となった道路脇の仕掛け爆弾だ。先頭の国軍兵士は、金属探知機を使って
足元を警戒しながら、一歩ずつ、薄氷をふむように歩みを進めた。
「まっすぐ走るな。ジグザグに。もっと姿勢を低く」
サングラス姿の下士官の怒号が飛ぶ。不ぞろいの戦闘服を着た兵士たちが、砂ぼこりを巻き上げて荒れ地を駆け回る。
アフガニスタンのウルズガン州にある国軍基地で、新兵22人の戦闘訓練が行われていた。敵の待ち伏せ攻撃を想定し、2
人が一組になって、小銃で応戦しながら退却と前進を繰り返す。
アフガンの治安を担う国際治安支援部隊(ISAF)の戦略の柱は、アフガン国軍の育成だ。国軍が自力で任務をこなせる態
勢が整ってこそ、アフガン政府への治安権限移譲が進み、駐留外国軍は撤退できるが、現実は厳しい。
(一旦切ります、続きは>>2以降)