08/11/27 19:58:19
「ただそこに座って『日本は不思議ですね』と言うだけの外人には、あまりお呼びがかからない。だって、
それはとっくに聞き飽きているでしょう」
いまどきの有名外人タレントは、語学力や肌の色のほかに、なにか特技を持っていることが多い。
スペクター氏は、やり手のジャーナリストとして生き抜いてきた。世間で知られていない、あるいは
まだ訳されていないニュースや有名人のゴシップを掘り出して、週に何本かの番組で紹介する。
若手でいうと、パトリック・ハーラン氏(芸名パックン)はハーバード大卒のお笑い芸人。ジェローム・
ホワイト氏(芸名ジェロ)は、史上初の黒人演歌歌手といわれている。中には海外まで名を知られた
外人タレントもいる。韓国の人気コメディアン兼女優のチョ・ヘリョンさんは、週のうち半分を自国で
過ごし、残り半分は東京でバラエティ番組の録画などに費やす。
だが、業界の一部には独特の古臭い体質が残る。特に目立つのは、黒人をひどいステレオタイプに
押し込めようとする姿勢だ。たとえば、ナイジェリア人で格闘家としても活動するボビー・オロゴン氏は、
目をむいた表情を作り、わざと間抜けな声を出してタレントとしてのキャリアを築いてきた。「確かに、
(日本の芸能界は)紋切り型なステレオタイプをこれでもかと強調しがちだ」とスペクター氏は言う。
「しかし一方で、それによって生計を立てている人も多い。だからだれも文句は言いません」
テレビ東京から私に声がかかったことでも分かるように、外国人による日本評には相変わらず需要が
あるようだ。ただ、その論調は時とともに変化している。90年代には情け容赦なくたたいても
受け止められたし、そう仕向けられることさえあった。98年から02年には厳しい経済状況を背景に、
「ここがヘンだよ日本人」と題した番組がヒット。スタジオに大勢の外国人が集まり、自分たちが
好き好んで住んでいる日本に対して、この上なく辛らつな言葉で不満を吐き出していた。 制作者や
視聴者にとっては自虐行為そのもの。他国では想像もできないことだ。
私たちの番組が基準にするなら、日本のテレビは今、国民に誇りを与える方向に揺れ戻っている。
番組が扱うのは、見事な業績を成し遂げた日本人で、その人たちの活躍から何かを学ぼうというのが
番組のコンセプトなのだから。学ぶべきなにかとは、まさに番組のキャッチフレーズが言うとおり。
「日本人が少し胸を張れる」ことだ。
(フィナンシャル・タイムズ 2008年11月21日初出 翻訳gooニュース) ジョナサン・ソーブル