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住民投票で家畜が勝ち取った権利
Stefan Lovgrenfor National Geographic NewsNovember 7, 2008
URLリンク(www.nationalgeographic.co.jp)
火曜日には民主党のシンボルであるロバの群れが幅を利かせていたかもしれないが、
本当の意味で勝利した動物はカリフォルニアの家畜だったのかもしれない。
産卵鶏、妊娠した豚、および肉牛として育てる子牛は現状よりも大きな囲いの中で飼育しなければならない、
という提案に州人口の3分の2近くが賛成投票したのである。
その法律では、動物が楽に向きを変えたり、横になったり、立ち上がったり、足を思いっきり伸ばしたり、
といったことのできるスペースを十分に確保しなければならない。
業者は、鶏のいわゆるバタリーケージや、豚や子牛を収容する窮屈な木箱を2015年1月1日までに段階的に
撤去していく必要がある。
バタリーケージとは、窓のない密閉鶏舎に何段にも重ねられている小さなワイヤー製のカゴのことだ。
「これまでに住民投票で通過した国内の動物保護法案の中で、最も圧倒的な支持を得た法案だ」と、
カリフォルニア州サクラメントにある全米人道協会の主任エコノミスト、ジェニファー・フィアリング氏は言う。
この発議は、全米人道協会が主要な後ろ盾となっている。
反対者の言い分によれば、この法案は愛情を持って動物に接している大多数の農業従事者や牧場労働者を
中傷しているという。
新しい規制はコストを急騰させ、活気のあるカリフォルニアの卵業界を弱体化させる可能性があると
警告する業者もいる。
「失業することになるだろう」と、サンディエゴでアームストロング養鶏場を家族で経営している社長の
ライアン・アームストロング氏は言う。
フロリダ、アリゾナ、コロラド、そしてオレゴンといった州も豚や子牛について同様の法案を通しているが、
すべての産卵鶏に現状より大きなスペースを与えなければならないという法案はカリフォルニア州が初めてである。
主な焦点は3億3700万米ドルという規模に及ぶカリフォルニア州の鶏卵産業だった。
カリフォルニア州では、全米の食用卵の約6%が生産されている。カリフォルニア州に2000万羽いる産卵鶏の
90%以上がバタリーケージで飼育されている。
動物保護活動家によると、3~10羽を収容するバタリーケージは狭すぎるため、体がワイヤーに押しつけられて
鶏の羽が抜け落ちている。
さらには、一部の農場ではケージが積み上げられているために、一番下のケージにいる産卵鶏は汚れた環境で
生きることが強いられているという。
前出のアームストロング氏は、動物を虐待している“悪い業者”も多少はいるかもしれないと認めている。
しかし、「圧倒的多数の業者は安全で健康的な環境を与えている」と彼は言う。
議論の多くは慣行を変えるのにどのくらいのコストが必要かということが中心であり、賛成側と反対側は
それぞれ法案の経済的な影響について異なる見解を述べている。
反対側の意見によれば、カリフォルニア州の養鶏業者はバタリーケージを合法的に使える州外の業者と
競争できなくなるという。
カリフォルニア大学デービス校では、法案はカリフォルニア州の鶏卵産業を壊滅させる恐れがあり、5750件の
職が失われる可能性があると予測している。
60万羽の鶏をバタリーケージに収容し、6万羽をケージ外で飼育しているアームストロング氏の会社では、
新しい規制で1羽ごとに30 ドルのコストがかかり、合計では1800万ドルになるという。
「これまでの家畜小屋を解体して建て直さなければならないだろう」と彼は話した。
一方、賛成側は、コストの増加は卵1つあたり1セント以下だという研究を持ち出して、このような経済的な懸念は
誇張されていると主張し、さらに、ケージを使わずに鶏を飼育すればサルモネラ菌のような病気のリスクが減少する
という研究結果も提示している。