08/10/02 11:28:14
英揺れる民営化先進国 閉鎖次々郵便局が激減
「民営化先進国」の英国が郵便局の閉鎖で揺れている。自由競争でサービス向上のはずが、
郵便局は激減。地域社会は衰退の危機にさらされ、規制緩和路線をまい進してきた労働党
政権の支持基盤も危うい。 (英中部マンチェスターで、星浩)
「えっ、きょうで閉まるの?」。イレーヌ・ランキンさん(58)は下りかけたシャッターを
見て嘆いた。「遠くの郵便局まで行かなくちゃ。でも、年寄りが歩ける距離じゃないわ」
マンチャスター郊外のレベンシャム地区。労働者階級の住宅地にあるバーロー・ロード
郵便局は、九月二十三日に閉鎖された。
後片付けをするスニ・アフメッド臨時局長(27)が浮かぬ顔で口を開いた。「利用者の
八割はお年寄り。でも、どうしようもない。僕も失業だ」
労働党政権は競争原理でサービスと経営の改善を図ろうと、二〇〇一年に郵政を民営化し、
〇六年に完全市場開放に踏み切った。
だが、株式会社となった郵便会社「ロイヤル・メール」は〇七年度、初めて約百万ポンド
(約二億円)の赤字に転落。参入した十七社に大口ビジネス郵便市場の40%を奪われた。
「同一料金による全国一律サービス」で経費がかさみ、利益の少ない地方への小口郵送や
郵便局網の維持は負担に。政府は今年、二千五百局の閉鎖を決め、一九九〇年に約二万局
あったのが年内に一万二千局に減少。維持のための再国有化論まで出ている。
バーロー・ロード郵便局の閉鎖反対運動をしてきたパット・ウォルシュさん(47)は
「民営化、利益優先で公共サービスは低下するばかりだ」と憤る。「政府は金融機関の
救済には巨額を投じるくせに地域社会の破たんにはあまりに無頓着だ」
2008年10月2日 朝刊 東京新聞
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