08/09/10 11:24:56
【コラム・断】グルジア人と柔道
少なくとも私の知る限りにおいて日本人に最も親愛の情を抱いている外国人はグルジア人である。それには
柔道が果たした役割がきわめて大きいと考える。
初めてグルジアを訪れたのは1989年2月のことだ。当時はソビエト連邦を構成する15の共和国の
ひとつだった。首都トビリシの空港に着くなり、ザ・ピーナッツの「恋のバカンス」で迎えられた。そのもてなしが
うれしかった。
グルジアは押し寄せるペルシア、タタール、トルコ、さらにはロシアの侵攻を迎え討つという苦難の時代が
19世紀まで続いた。それゆえグルジアの男たちは勇猛で誇り高い。何よりも男らしさが尊ばれ、格闘技が
称揚された。
格闘技の中でも、とりわけ人気が高いのが民族格闘技のチタオバだ。日本でいう奉納相撲。かつて勝者には
牛や羊が贈られた。王者になれば故郷の英雄だ。グルジアの男たちは子どもの頃からチタオバに
慣れ親しんでいるので柔道の上達も早い。ミュンヘン五輪金メダリスト、ショータ・チョチョシビリ、アテネ五輪
金メダリスト、ズラブ・ズビャダウリらがそうだ。
酔えば決まって「日露戦争の勝利を祝う」とタマダ(宴会の主)が乾杯の音頭をとる。そして「日本とグルジア
両国民にはサムライの血が流れている」と続ける。
そのグルジアが国難に見舞われている。日本と同様に領土の一部をロシアに奪われた。他人事ではない。
2014年、ロシアはグルジアに近いソチで冬季五輪を開催する。「血塗られた五輪」に無関心であっては
ならない。(スポーツジャーナリスト・二宮清純)
05:30更新
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