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蕨のフィリピン人一家不法滞在:退去通告、変わらぬ入管の対応 /埼玉
◇地元には同情の声 「滞在認めてあげて」
蕨市のフィリピン人、カルデロン・アランさん(36)夫妻は27日、東京入国管理局に出頭し、
「3月9日までに家族全員か、娘を残し帰国するか決めなければ強制収容する」と通告された。都内で記者会見し、
「3人で日本にいたい気持ちは変わらない」と改めて訴えた。
地元蕨市では「一家での滞在を認めてあげれば」と同情する声が聞かれた。
【稲田佳代、和田憲二、桐野耕一】
厳しい表情で会見に臨んだアランさん。「残念です」と声を絞り出した。妻サラさん(38)は終始うつむいていた。
一方、森英介法相は閣議後会見で、両親との日本での生活を熱望する長女ノリコさん(13)について
「(日本にいる)親せきらの元で学業を続けるなら、在留特別許可を出す」と語った。
国連人権理事会から一連の経緯について政府に照会がされており、「関係省庁間で対応を協議する」と述べた。
一家が在留特別許可を求めて署名集めをしてきたJR蕨駅前では、同情と困惑の声が交じった。
11歳の娘がいる自営業の男性(50)は「子供がいるんだから日本に置いてあげたらいい」。
アルバイトの女性(30)も「不法入国は悪いけれど、長くいたんだからもう在留を認めてもいいのでは」。
別の会社員の男性(42)は「法的には帰るべきだけど、感情的には気の毒」と話した。
◇「帰国」も選択肢--専門家
外国人問題に詳しい団体や入管行政の専門家に意見を聞いた。
在日フィリピン人を支援する蕨市のNGO「KAFIN」の太田直子さん(44)は
「両親に過失はあるが、強制退去は人道的におかしい。在留を認める代わりに地域貢献を義務付けるような対応があってもいいのでは」。
不法滞在者の子供の日本国籍取得を支援するふじみ野市のNPO法人「ふじみの国際交流センター」の石井ナナヱ理事長(61)は、
不法滞在で逮捕された人やその家族が強制退去させられる例を数多く見た経験から、
「正規に入国して定住すれば社会保障も受けられる。
ノリコさんには試練だが、両親は一度帰国し、再入国した方が彼女の将来のためにもなる」
と話す。
元東京入国管理局長で外国人政策研究所(東京)の坂中英徳所長は、一家に在留特別許可が出ない理由について、
「一家に在留特別許可を与えなかった法務省の裁決を適法とする判決が、08年9月に最高裁で確定している。
行政は司法の判断に従わざるを得ないからでは」
と解説する。
強制退去で帰国すると、法律で5年間再入国できない。
だが、坂中所長によると、人道上の観点から大臣が特別に許可し、1年ほどで再入国できることもあるという。
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毎日新聞 2009年2月28日 地方版